遺言書について

遺言書に関する基本情報

遺言書とは

遺言書は、ご自身の死後、誰にどのような遺産を渡すのかを具体的に記載した、民法で規定されている法律文書です。

遺言書のルール

誰でも書ける?

遺言書は15歳以上の方が作成することが出来ます。ただし、遺言書は法律文書になるため、意思・判断能力がないと書くことができません。そのため、認知症になってしまうとご自分の遺産を渡す方法を指定することが出来なくなってしまいます。「元気なうち」に書けるのが遺言書です。遺産の渡し方を考えているのであれば、早めの作成を推奨します。

夫婦で書ける?

“遺言書は「単独」で作成しなければならない”と法律で定められています。共同遺言の禁止といいます。自分の財産は自分がどうするか決めるということです。夫婦で相談して遺言書を残すことは可能ですが、あくまで個人の財産です。夫婦で1つの遺言書を残すということはできません。

遺書と遺言書は別物?

遺書と遺言書は似ていますが、明確な違いがあります。
遺書 …法的な効力や様式などはなく、家族や友人に残す手紙のようなもの
遺言書…法的な効力があり、民法に従って作成することで財産の分割方法を規定して記入することができる書面

遺言書に種類はあるの?

あります。遺言書は大きく分けて「普通形式遺言」と「特別方式遺言」の2つに分かれます。一般的な遺言は「普通形式遺言」にあたり、さらに公正証書遺言、自筆証書遺言に分かれ、それぞれにかかる費用やメリット・デメリットが異なります。

公正証書遺言(民969)
費用公証役場手数料(16,000円~)
証人依頼代
保管原本は公証役場、正本と謄本(写し)は本人、推定相続人、受遺者、遺言執行者など
メリット ・家庭裁判所の検認不要
・公証人が作成するため、無効な遺言書となる可能性が少ない
・未発見や変造されるリスクが少ない
・紛失しても謄本の再発行が可能
デメリット費用が余分に掛かる
自筆証書遺言(民968)
費用ほとんどかからない
保管本人、推定相続人、遺言執行者、受遺者、友人など
メリット ・費用がほとんど掛からない
・証人が必要なく、いつでもどこでも簡単に用意が可能
・再作成が容易
デメリット ・紛失、変造、隠匿等の可能性がある
・遺言の要件を満たしていないと無効になる可能性がある
・家庭裁判所の検認が必要
付随サービス法務局預かりサービス
自筆遺言書の法務局預かりサービスとは?

今までは自筆証書遺言だと自宅保存が主流で、せっかく書いた遺言書が見つからなかったり、見つけた相続人が不利な内容を目にして改ざんしたり、隠匿や廃棄する可能性もありました。もし正当に書かれている遺言書が見つかっても「検認」が必要で時間がかかるのが当たり前でした。
それが、2020年7月に「法務局における遺言書の保管サービス」というサービスが始まったのをご存じでしょうか。 自筆遺言書を「有効に残せる手段」といえます。「法務局における遺言書の保管サービス」と公正証書遺言の違いは下記の通りです。

公正証書遺言(民969)
料金面 公証人役場での作成、登録費用が掛かります。※公証人役場HP参照
専門家にお願いすると別途費用が掛かる
手間 必要書類の収集
公証人との打ち合わせが必要
証人を2人用意する必要がある
本人が出向けない場合出張サービスあり
作成場所公証役場ならどこでもOK
保管期間半永久的
検認不要
検索システムあり
紛争防止性概ね役立つといえる
相続開始の通知なし
自筆遺言預かりサービス
料金面全国一律 3900円の収入印紙での納付なので安価 ※その他手数料は法務省HP参照
手間申請予約をし、自分で書いて預ける
本人が出向けない場合出張サービスはないため、必ず本人が出向かなければならない
作成場所住所地、本籍地の特定法務局
保管期間死後50年(コンピューターデータは150年)
検認不要
検索システムあり
紛争防止性必ず役に立つとは言えない
相続開始の通知あり
公正証書遺言と自筆遺言(預かりサービス)どちらがいいの?

遺言を残す目的は一人一人様々な理由があると思います。 簡単に、費用を抑えたい方は圧倒的に自筆遺言の方がいいと思われるかと思いますが、せっかく書いた遺言書が「争続」になる可能性も多いのが事実です。 「とにかく、遺言書が作成できればいい」という方と、「先祖代々の財産を子孫に残し家督を守ってほしい」と考え、相続で争ってほしくないという方では推奨される遺言作成方法は異なってきます。 「遺言書を残す=相続人間で争ってほしくない」 と思われるための遺言作成であれば、公正証書遺言をお勧めします。 SMC東濃相続税の相談窓口では、お客様のニーズをお聞きし、紛争性のない遺言書作成のご提案もさせていただいております。どのくらいの費用でどのくらいの期間がかかるのか、そういった疑問でも構いません、無料相談を受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

検認とは?

検認とは、家庭裁判所が自筆証書遺言や秘密証書遺言の形式が整っているかを判断する手続きのことです。検認手続きをしてからでないと預貯金の解約や相続登記などの名義変更を行うことができません。検認は手続きに数週間から数か月かかると言われています。なお、検認前に自筆証書遺言や秘密証書遺言の開封を行うと、5万円以下の過料に処せられることもあります。 検認手続きは遺言書の形式の判断、後日の偽造防止のためのものなので、遺言書自体の効力を証明するものではありません。

遺言書の書き直しはできる?

遺言書は作成した後変更したいと思ったらいつでも書き直しや撤回を行うことが出来ます。公正証書遺言を作成した後、自筆証書遺言で書き直しを行うことは可能です。
※日付の新しいものが有効になります

遺言書作成で知っておくべきこと

多めに財産を渡したい家族がいる

相続人全てに平等な遺産相続をすることは困難です。

しかし、資金を援助したい(援助した)子供がいれば「特別受益」を、介護などしてくれた子供には「寄与分」を考慮する必要があるでしょう。とは言え、特定の人に財産がかたよった場合、相続争いを引き起こす原因になります。このような場合、遺言書により遺産分割方法を指定できます。遺された家族の生活や事業承継を思って作成した遺言書を確実にするため注意点があります。
例えば遺言書に「●●の不動産の●割を相続させる」などのように、割合しか書いていない場合、相続人全員が集まってそれぞれどのように分けるかを協議することになります。同じ割合でも不動産の場合、道路付けなどの環境により財産評価も変わります。

遺留分を侵害した遺言書にしない

特定の相続人には、最低限相続できる「遺留分」という権利があります。遺留分を侵害した遺言書をつくると、他の相続人から「遺留分の減殺請求」を受ける可能性があります。遺言書に書いていない財産がある場合、その財産については遺産分割協議になります。

遺産分割協議などで揉めないように、ご自身の意志を伝える役割を果たすのが遺言書になるため、作成にあたっては注意しましょう。

SMC東濃相続税の相談窓口では公正証書遺言の作成サポートをしております。お気軽にご相談ください。

「遺言執行者」について

遺言執行者とはそのまま、遺言に書かれた通りに分ける事務処理をする者のことです。

【遺言執行者の仕事】

  • 預金の払戻し
  • 不動産・株の名義変更
  • 遺留分の確認
  • 不仲な相続人とのコミュニケーション
遺言者の死は誰にも予想できません。その時に遺言執行者に指定されている方が先に亡くなってしまう可能性もあります。 その場合、せっかく指定した遺言執行人が意味を成しません。そのため親族や個人弁護士・司法書士よりも、 相続手続きに精通した法人執行者(例:弁護士法人、司法書士法人、行政書士法人、社団法人)を指定することを推奨します。

予備遺言が重要です

「予備」という言葉通り、相続をさせたい人が先に亡くなってしまった場合どうするかを指しています。もし指定していない場合、遺産分割にかけられ、相続人で話し合いをしなければなりません。
会社経営や守りたい土地などがあり、現預金などの動産資産が少ない場合、兄弟で話し合って、後継ぎのお孫さんに相続してもらうという話になれば問題ないのですが、折り合いの悪い兄弟姉妹がいると、法定相続分の現金を用意しないといけないということになりかねません。次の次までを考えて遺言書を作成しましょう。

遺言書の書き直し

遺言書は自分が亡くなったときの財産の分け方を記すものですが、配偶者や子供に財産を相続させる旨を記載場合が多いと思います。しかし、財産を相続させる予定だった家族が自分より先に亡くなってしまうこともあります。そういった場合、遺言を書いた当時とは推定相続人が変わってきます。そうなると、各推定相続人の法定相続分や遺留分も変化しますので、遺言書の見直しの上、内容によっては書き直しをおすすめしています。

遺言で指定した相続人が亡くなっている場合、そのままその相続人の代襲相続人になるわけではありません。その財産は行き場のない財産という扱いになり、相続人同士で相談して分ける、いわゆる「遺産分割協議」の対象となります。
せっかく事業を継いでくれた長男のために遺言を書いてもこのようなことになると遺言者の意思が残せないことになります。

そのため、財産を残したい相続人が自分より先に亡くなってしまう場合を想定して遺言書を書く方法もあります。これを「予備的遺言」といいます。
例えば、「財産A及びBを長男に相続させる。ただし、長男が遺言者の死亡以前に死亡しているときは財産A及びBは○○に相続させる」といった書き方をします。

このように、最初に遺言書を作成する際に不測の事態に備えて、遺言を記載しておくことも遺言書を書く上で失敗しない大切な方法です。

もし、上記例のように用意した遺言書に不測の事態が起きたり、環境が変わったことで遺言書の不備に気づいた時には書き直しの検討をしましょう。