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書面添付制度を利用して税務調査が省略された事例

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背景

被相続人:母(後妻)
相続人:長男(前妻の子、後妻母と同居)、次男(後妻の前夫との子、後妻母と別居)
相続財産:3億円

状況

長男の実父は既に他界しており実母は実父より前に他界しています。
実父の相続の際には長男が全ての遺産を相続し、その後長男は自分名義の預貯金の管理を後妻母に任せていました。今回の相続に際し調べたところ、母親は預かっていた長男の預貯金から長男に無断での出金を繰り返していたことが判明し、この出金額が母親の財産形成に回っていることが明らかだと思われました。
相続税の申告の際にはこの出金額を長男が母親に貸し付けているものと解釈し、母親の債務として相続財産から差し引いて申告をしました。
この貸付金の金額を確定させるためには過去の通帳の動きや金融機関から母親の筆跡による払出請求書の写しをもらうなど入念な調査を行い、その旨を税理士法第33条の2に規定する書面に記載しこれを添付して申告書を提出しました。

結果

書面添付制度は、税務署が申告書の内容について疑義がある場合などにすぐに税務調査を行うのではなく、まず税務代理人である税理士に説明を求め、その説明で疑義が解消した場合には税務調査を省略できる制度です。本件申告書を作成するにあたって確認した帳票・事項、お客様から質問や相談を受けた事項などを記載した書面を申告書に添付します。
申告書を提出して数か月後、税務署から当税理士事務所に連絡が入り、上記貸付金の取り扱いについての説明が欲しいとの連絡がありました。その後当初確認した帳票を持参し説明した結果、理解を得ることができ、税務調査は省略されました。
以上の通り、書面添付制度には税務調査に代えて税理士が税務署に説明することで調査手続きを省略できるメリットがあります。また、修正申告があった場合には加算税と言われる罰金が課されますが、この加算税も、調査による修正の場合と調査前に自主的に修正する場合とでは金額が異なる場合があり、書面添付で調査が省略されることによるメリットを受けられる可能性もあります。

投稿者プロフィール

岡本 英樹
大学卒業後、地方銀行に入社。法人融資を中心に法人渉外、個人融資、ファイナンシャルプランナーなど銀行業務を幅広く経験。15年勤務の後SMCグループに入社。
法人会計税務の他、相続・事業承継の専門家としてクライアントの様々な問題解決にあたっている。