投稿日:2021年12月21日
更新日:2023年03月17日
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2020年10月から従来は紙での提出が必須であった年末調整が電子データで提出できるようになりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、多くの企業がリモートワークに取り組むようになっており、電子化の影響は大きいと言えるでしょう。
年末調整が電子化されたことでどのような影響があるのでしょうか。具体的に確認してみましょう。
目次
電子化の影響について解説する前に、そもそも年末調整とはどのような制度なのか解説します。年末調整とは1年間で払いすぎた所得税が還付される制度です。会社員や公務員は毎月の給料を元に源泉徴収で所得税が徴収されています。
しかし、所得税には生命保険料控除や住宅ローン控除などの各種控除があります。各種控除を適用した場合には、支払うべき所得税が安くなりますので、毎月の源泉徴収は税金の払いすぎた状態となります。
その、払い過ぎた税金を還付する手続きが年末調整です。年末調整によって払いすぎた税金が還付され、正しい所得税額となるのです。
年末調整は必ず行う必要があるわけではありませんが、しっかりと手続きを行えば税金が還付されるため、多くの人が年末調整を行っています。
電子帳簿保存法が施行されたものの、なかなか帳簿の電子保存が普及しませんでした。それは電子保存をする前に税務署長に承認を受けることが必要等の手続が煩雑であったり、特に領収証などのスキャナ保存に関してはタイムスタンプの要件が厳しかったり、事務手続のハードルが高いことが原因の一つと考えられました。
今回の改正で電子保存のための要件を緩和し、帳簿の電子保存を普及させたい目的があります。
年末調整は従来紙で提出する必要がありましたので、生命保険や住宅ローンの書類を総務部などに提出し、処理するのが一般的でした。電子化することでどのようなメリットが得られるのか、企業側と従業員側に分けて具体的に解説します。
年末調整を電子化することで得られる企業側のメリットについて解説します。
従来通り紙で管理する場合は各種証明書を経理の担当が電卓で計算し、提出された書類との整合性を確認していました。
仕様の違う各書類の控除金額を見つけ出すのは時間がかかります。紙で提出するということは間違えが無いか手で計算し、確認する必要があるので、人件費がかかってしまうのです。書き方がわからない社員への指導や問い合わせも総務部が行うことが多いでしょう。書類の記入方法などもアドバイスも必要です。しかし、電子化することで入力が容易となり、質問に答える総務部担当の手間も削減することができます。
また、計算した結果を給与と連動するシステムに入力する必要があります。大量の書類を手入力するだけで膨大な作業量です。
紙で年末調整の書類を提出する際は申告書や証明書を7年間保存する義務があります。書類を保管する義務があるということは、書類を保管するための倉庫代も企業が負担する必要があります。7年分を保存するとなると、膨大な量になってしまいますので、企業にとっての負担も大きいものです。
年末調整の手続きを電子化することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。従業員側のメリットについて確認してみましょう。
従業員は従来、年末調整は紙で書類を作成し、総務に提出していました。そのため、出社しなければ提出することができませんでした。しかし、電子化することで、リモート環境でも提出することが可能です。
新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、リモートで様々な業務をこなす企業が増えています。リモートで提出できるという点は電子化の大きなメリットといえるでしょう。
年末調整をシステムで行う際はシステム上の補助があるため、入れ間違えなどを抑制することができます。紙で作成する際はどこに何を書いていいかわからないという方でも、システム化されることで入力が容易になります。
年末調整は2020年から電子化対応が可能となっています。しかし、すべての企業が年末調整の電子化を行わなければならないわけではありません。企業規模が小さく、年末調整に多くの負担がかかっていないのであれば、これまで通り紙で提出する企業も多いでしょう。
年末調整の電子化はあくまで任意の制度であり、強制ではないということを覚えておきましょう。
年末調整を導入することで企業は事務コストを削減できるうえに、書類を保管する必要がなくなります。メリットも大きい年末調整の電子化ですが、デメリットもあります。
それは、システムには初期コストがかかるという点です。年末調整を電子化するためには給与と連動するシステム開発を行う必要があります。
システム開発のコストは初期投資が大きくかかります。事務コストの削減により、徐々に回収できますが、資金繰りに余裕のない企業にとっては、目先の資金確保の方が重要です。特に従業員数が少ない企業ではメリットはでにくいといえるでしょう。
システムは使う人数が多くなっても、同じペースでコストが増加するわけではありません。多くの人が同じシステムを使うことで、システムにかかる一人あたりの費用を下げることができます。
年末調整を電子化する企業は、企業規模なども鑑み、事務コストが削減できるというメリットと、初期投資のコストがかかるというデメリットをしっかりと理解したうえで、導入する必要があるでしょう。今後は電子化の流れが加速し、年末調整は電子化される可能性が高いでしょう。
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このコラムの著者 : 舩田 卓
1972年愛媛県生まれのA型。 愛媛県立松山商業高校卒業後、東京IT会計専門学校に進学。 在学中に税理士試験を全国最年少20歳で合格。 そのまま専門学校の専任講師となり、税理士試験の受験指導を担当。 22年間務めた講師の道から飛び出しSMC税理士法人に入社。