投稿日:2018年11月17日
更新日:2022年09月27日
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建築業の経理の方は、通常の業種と異なる勘定科目が出てきます。
完成工事高、完成工事原価、未成工事支出金、未成工事受入金等がそうです。
しかし難しく考える必要はありません。このコラムでは建築経理をカンタンに理解してもらいましょう。
「新築の家を1軒建てる」という受注をしてからのお金の流れで考えていくと、とても良く分かります。
①契約時に契約金を受け取った ・・・ 「未成工事受入金」
まだ商品を受け渡していないので売上ではありません。完成するまでに受け取ったお金はこの勘定科目に入れておきます。
現預金 / 未成工事受入金
②材料費と外注費を支払った ・・・ 「未成工事支出金」
①と同様、まだ商品が完成していないので、材料費や外注費には計上しません。完成するまでに支払ったお金はこの勘定科目に入れておきます。
未成工事支出金 / 外注費・材料費(現預金)
③現場の経費を支払った ・・・ 「未成工事支出金」
こちらも②と同様、まだ完成していない売上に対する経費なので、この勘定科目です。
未成工事支出金 / 消耗品費など(現預金)
④家が完成した ・・・ 「完成工事高」「完成工事原価」
今まで受け取っていたお金、最後に受け取ったお金は、ようやく「完成工事高」となります。
同様に、今まで支払ったきたお金、最後に支払ったお金は「完成工事原価」に振替えます。
未成工事受入金 / 完成工事高
完成工事原価 / 未成工事支出金
と、非常に分かりやすいように思えますが、実際の経理はこんなに簡単ではありませんよね。
なぜなら建てている家はこの1軒だけでなく、他にも修理やリフォーム等に関わる、さまざまな支払いも同じ取引先へ支払うことも多く、その支払いまで「未成工事支出金」に入れるわけにはいきません。
そこで必要になるのが「工事台帳」です。
工事台帳は、受け取ったお金と支払ったお金の他、かかった経費を、完成するまで記帳していく帳簿です。「未成工事受入金」「未成工事支出金」が一目で分かります。
下記の山田邸の工事台帳を見てみましょう。
着手金と中間金で20,000千円を受け取っています。これが「未成工事受入金」です。
そして材料費や外注費、経費として9,548千円を支払っています。またこの現場に18日間関わっている社員の労務費が270千円あります。この合計9,818千円が「未成工事支出金」です。
建築経理を難しく思うのは、完成していない商品のお金をもらったり、支払ったりすることなのです。
このお金を、完成するまで損益計算書に計上しない、つまり貸借対照表にしておく処理が必要になります。具体的には下記のような仕訳処理を行います。
現金預金 20,000千円 / 未成工事受入金 20,000千円
未成工事支出金 9,818千円 / 期末未成工事支出金 9,818千円
「完成しないうちは、損益計算書から抜く!」
「完成したら、損益計算書に移す!」
建築経理は工事台帳を使って、こんな処理をしているのです。
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このコラムの著者 : 菱刈 満里子
大学卒業後、大手証券会社、文部科学省研究室秘書等を経験後SMC税理士法人に入社。 会計・税務業務に13年間携わった後、経営計画を中心とした未来経営に軸足を移す。 のべ150社以上の経営計画を作成、経営支援を行っている。