投稿日:2021年12月28日
更新日:2023年03月17日
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2021年度の税制改正によってM&Aに関する様々な減税措置が発表されました。M&Aの実行において税金についてしっかり理解しておくのは重要です。
今回の税制改正はM&Aの実行において様々な有利なポイントがありますのでしっかり確認していただけると幸いです。
2021年度のM&Aに関する税改正のポイントは3つに集約されます。
それぞれのポイントについてわかりやすく説明します。
弁護士が見たキャッシュを増やすヒケツ青色申告書を提出する中小企業者で、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた企業が、他の法人の株式などを取得した場合に、その株式などの取得価額の一部を損金算入できる制度が創設されました。
株式の取得価額の上限金額は10億円なので、中小企業が行うM&Aでは十分な金額といえるでしょう。
M&A税制の内容は、株式などの取得価額の70%以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てた場合に損金算入が可能になったことです。
M&Aでは、買い手側が売り手側の財務状況をよく確認せずにM&Aを実行してしまうことがあります。そして、 M&A実行後に、売り手企業の簿外債務や偶発債務がわかることもよくあるのです。
簿外債務の金額が大きいと致命的なダメージを受けてしまうことにもなりかねないため、いくら売り手企業が魅力的でもM&Aを購諾してしまう企業は一定数あります。
M&A税制は、隠れ負債などのM&Aのリスクを軽減するための制度です。もし、M&Aの実行後に簿外債務などが発覚しても。中小企業事業再編投資損失準備金で補填することができますので買い手企業が損失を被ることはありません。
この制度があれば、簿外債務が万が一、発覚してもM&Aの買い手は損をしないので思い切ってM&Aの実行ができます。
また積み立てた準備金の金額は、その株式などの全部又は一部を有しなくなった場合やその株式などの帳簿価額を減額した場合などに取り崩すほか、5年間の据置期間経過後、原則として5年間で均等額を取り崩して益金算入されます。
M&A税制の適用期限は中小企業等経営強化法の改正法施行の日から 2024年3月31日までです。
M&A税制が創設されたことにより、M&Aによる株式の取得後に簿外債務、 偶発債務等が顕在化するリスクに備えるため、準備金を積み立てることができるようになりました。
M&A実行後に、想定していたシナジー効果を得るためには、人材の融和は非常に重要です。
いくら机上の計算では、シナジー効果が期待できるとなったとしても、実際に業務を行うのは、「人」だからです。
M&Aの買い手企業と売り手企業の融和がうまくできなければ、想定していたシナジー効果を得るのは難しいでしょう。
特に売り手企業から来た従業員は、買収された引け目があるかもしれませんし、人事条件や働く環境などが大きく変わることによって知らず知らずのうちにストレスをためてしまっているケースはよくあります。
もちろん買い手側の従業員も働く環境が大きく変わることになるので細心の注意を払う必要があるでしょう。
従業員の士気を高めるのに最も効果的で手っ取り早いのは、給料を上げることです。
給料を上げることによって従業員のモチベーションは劇的に上げることになるでしょう。
しかし、簡単に給料を上げるといっても実際は難しいケース多いはずです。
そこで今回の税制改正では、給与などの支払総額が前年比1.5%または2.5%以上増えた場合、増加分の15%または25%をそれぞれ税額控除できる制度が創設されました。
この制度があれば、積極的に給料を上げることに抵抗がない企業もあるはずでし、もしベースの給料を増やしたくない場合は、ボーナスなどの一時金という形で対応するのも良いでしょう。
M&Aを行った後、期待したシナジー効果を得るためには、設備をしっかり整備することは重要です。
M&Aの買い手、売り手に重複する設備があればランニングコストを抑える意味でも統合したほうが効率が良いでしょう。
またそれぞれの会社にノウハウがある場合、新たな設備を作ったほうが良いかもしれません。
このようにM&Aにおけるシナジー効果を最大限に得るためには、設備投資は非常に重要なポイントになるのです。
しかし、設備投資はタダでできるものでありません。
新たに設備を作る場合はもちろん、設備の統合においてもお金は必要です。
特に大きなお金がかかる設備投資には、二の足を踏むケースも多いでしょう。
今回のM&A税制では、設備投資しやすいように、設備投資に投じた額の10%(または7%)を税額控除、または全額を即時償却できることが盛り込まれています。
これを有効に使えば思い切って設備投資に踏み込める企業も多いのではないでしょうか?
今回はM&A減税について説明しました。事業承継に悩む中小企業は非常に多く、事業承継の手段として M&Aを検討している企業も多いでしょう。
M&Aは有効な事業承継の方法になりますが、一般的に大きな資金がかかります。
またM&Aを実行した後も様々なお金がかかるのが一般的です。
簿外債務や偶発債務など予期せぬ債務が発覚することがあるのもM&Aを購諾する理由でしょう。
しかし、今回のM&A減税についてしっかり理解すれば、M&A のハードルが少し下がるのではないでしょうか?
是非、今回の記事を参考にM&A減税の理解を深めていただければ幸いです。
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このコラムの著者 : 舩田 卓
1972年愛媛県生まれのA型。 愛媛県立松山商業高校卒業後、東京IT会計専門学校に進学。 在学中に税理士試験を全国最年少20歳で合格。 そのまま専門学校の専任講師となり、税理士試験の受験指導を担当。 22年間務めた講師の道から飛び出しSMC税理士法人に入社。