投稿日:2024年04月05日
更新日:2024年05月15日
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コロナ禍以降、急速に進んだテレワーク。しかし、経理業務のテレワーク化については、会社によって対応が分かれました。
すでにペーパーレスやIT化を進めていた企業では、比較的スムーズにテレワークが導入されました。
一方で、経理業務についてはまだアナログな企業も多く、テレワーク化がうまく進まないケースもあります。
この記事では、これから経理業務をテレワーク化しようと考えている企業に対し、必要な準備や具体的な方法をご紹介します。
経理業務はテレワークがしやすい業種であり、パソコンを利用していれば基本的にテレワーク化が可能です。
ここでは、経理業務のテレワーク化が可能である理由について、わかりやすく解説します。
経理業務においては、基幹となる会計ソフトからエクセルやワードなどのソフトはもちろん、販売管理や仕入管理、固定資産管理、社内稟議書作成のためのさまざまなツールを使用します。
このようなツールは、クラウド版も数多く販売されています。そのため、ブラウザさえあれば社外からも容易にアクセスでき、テレワークで業務を遂行することが可能です。
したがって、経理業務はテレワーク化がしやすいといえるでしょう。
テレワークは社会全体で促進されており、新卒や転職活動をする人のなかにはテレワークを条件に考える方も増えているようです。
会社側としても、従業員のやる気を高めたり、企業イメージを向上したりするため、積極的に経理業務をテレワーク化しています。
また、経理業務をテレワーク化すると、通勤時間や移動のストレスの軽減などにより業務が効率化が促進されます。さらに、電子化によって紙や印刷コストなどの削減にもつながるため、これらも会社がテレワーク化を進める要因となっているでしょう。
一方で、紙の書類のやり取りが多く、請求書や契約書に押印が必須という会社も少なくありません。
また、経理は会社の数字を扱う部署なので、適切な対策をおこなわないままテレワーク化すると、セキュリティリスクが増加するという課題もあります。
さらに、テレワークでは従業員のモチベーションを維持することが課題となる場合もあります。従来の対面でのコミュニケーションにくわえ、オンラインミーティングを定期的に実施するなど異なるアプローチが必要になるでしょう。
ストラック図で逆算。いくら利益を出せば良いか教えます。テレワーク導入のためには、環境を整備する必要があります。ここでは、経理業務のテレワーク化に必要な事前準備について、わかりやすく解説します。
経理業務では、従来、紙の書類を大量に扱ってきました。例を挙げると、請求書や領収書、経費精算の書類や会計で使用する伝票、仕訳帳など多岐に渡ります。
しかし、経理業務をテレワーク化するためには、これらの書類を電子化する必要があります。
昨今改正された電子帳簿保存法では、紙書類のスキャナ保存は任意適用ではあるものの、こういった紙の書類はPDF等の電子データ保存に切り替え、テレワーク化を進めるとよいでしょう。
経理は、会社の機密事項を扱う部署です。
テレワーク化すると、どうしても自宅や公衆のネットワークを使用することが増えるため、セキュリティが脆弱になりがちです。
テレワーク化にあたっては、VPN接続環境を整えたり、使用するPCにもウイルス対策ソフトをインストールするなど、なるべく社内と同じ環境に近づけてセキュリティ対策を強化しましょう。
テレワーク化すると、電子メールやオンライン会議など多くの業務がPCを利用しておこなわれるため、PCの使用頻度が格段に上がります。
そのため、PCの使い方やセキュリティ対策、プライバシー保護の重要性など、社員に向けた教育や研修をしっかりとおこなうことが大切です。
経理業務のテレワーク化を促進するためには、クラウドツールや各種ツールを積極的に導入する必要があります。
具体的な導入方法については、次で詳しく解説します。
ここからは、経理業務のテレワーク導入について、具体的な方法をあげて解説します。
ここで紹介する方法は、必ずしも順番に導入する必要はなく、また、すべての準備が整っていなくても一部の業務をテレワーク化することが可能です。
なかには他部署との調整が必要な項目もあるため、徐々にテレワークでの稼働率を増加させるという意識で取り組みましょう。
経理業務のテレワーク化で特に重要なのは、「クラウド会計ソフト」の導入です。
従来のパッケージ型の会計ソフトは、会社のパソコンにインストールして使用するため、基本的に社内でしか利用できませんでした。
一方、クラウド会計ソフトは、インターネット環境とブラウザさえあれば、どのパソコンからでもログインして使用できます。また、近年では、スマホからログインして一部の機能を利用できるようなソフトも提供されています。
そのため、経理のテレワーク化では、まずクラウド会計ソフトを検討するとよいでしょう。
ただし、データ移行などの準備に手間と時間を要するため、準備期間に余裕をもって進めることが大切です。また、個人所有のパソコンやスマホ等からログインする場合には、セキュリティ面でしっかりと対策をおこないましょう。
そのほか、会社のパソコンそのものを、リモートツールで操作する方法もあります。会計ソフトを変えずに業務をリモート化できるため、会計ソフトを変更できない場合はこの方法も検討するとよいでしょう。
クラウド会計ソフトと同様に、経理業務のテレワーク化に欠かせないのが、「ネットバンキング」の導入です。
振込や税金の納付などの支払業務や入出金明細確認はもちろんのこと、近年ではクラウド会計ソフトと連動して、自動的に明細を取り込んでくれるような機能も強化されています。
また、販売管理ソフトと連動して自動的に入金消込をおこなってくれるようなソフトもあり、大幅な工数削減も可能です。
テレワーク化と業務コストの削減のためにも、ネットバンキングの導入を積極的に検討しましょう。
経理業務のテレワーク化だけでなく、業務効率の向上も期待できるのが「経費精算システム」の導入です。
現在でも、多くの会社では、経費精算の際にエクセルのフォーマットに情報を入力し、それをプリントアウトして提出する形式が採られています。この場合、領収書を台紙に貼り付けて提出するなど、アナログな方法が採用されていることもあるでしょう。
しかし、このような業務フローでは、計算間違いや転記漏れのチェックに大幅な工数がかかります。
一方、最新の経費精算システムでは、領収書はスマホで撮影してPDFで提出し、交通費もSuicaなどの交通系ICカードを読み取ればすべて自動で入力がおこなわれるなど、自動化が進んでいます。
また、金額や日付なども領収書から自動で読み取るため、手入力の手間が減り正確性も向上しています。
さらに、クラウド会計システムをはじめ、会計ソフトに経費精算機能が組み込まれたソフトも普及しつつあります。こういったソフトでは、経費精算と仕訳を連動できるため、大幅な業務効率化にもつながります。
従業員の人数が多いほど工数削減の効果も高まるため、経費精算システムの導入を検討しましょう。
「請求書の電子化」も、経理業務のテレワーク化には欠かせません。
紙の請求書の場合、取引先からの到着を待たねばならず、また、経理担当者は会社で原本を確認する必要があります。
しかし、請求書をPDFでの受領に切り替えたり、特定のファイルサーバーにアップロードしてもらったりすることでPC上で閲覧できるため、テレワーク化につながります。この場合、電子帳簿保存法により一定の要件でデータを保存する必要がある点に注意しましょう。
さらに、郵送によるタイムラグもなくなり郵送代も削減できるため、取引先の協力を得て請求書の電子化を推進することをおすすめします。
テレワーク化を進めるにあたっては、関係者がアクセスできるファイルサーバーを準備し、そこに資料を保存して情報を共有すると便利です。
さらに、外部からもファイルサーバーにアクセスできるようにしておけば、場所や時間を問わず、必要な情報にアクセスできるようになるため、よりテレワークに適した環境を整えることができるでしょう。
経理業務においては、取引先の請求書や領収書だけではなく、社内の給与情報や契約書などの資料も必要とします。
人事や法務、総務に関するシステムと経理システムを共通化することによって、社外でも情報の確認が容易となり、また、給与に関しては自動で仕訳を取り込むことができるシステムもあるため、テレワーク化と業務効率化を推進できるでしょう。
ストラック図で逆算。いくら利益を出せば良いか教えます。テレワークを導入しても、基本的に経理がおこなう業務の全体像は変わりません。ここでは、業務ごとの注意点についてわかりやすく解説します。
従来、経理担当者の出社が必要とされていた理由は、起票した仕訳・伝票の決裁業務があったためです。
現在でも、紙に伝票を打ち出し、担当社員が押印したものを上長や責任者に回し、チェック印をもらうという業務フローの会社も多いでしょう。
伝票に限らず、どの資料にも共通していえることですが、作成した資料に押印が必要である場合は、そのフローを変えない限りテレワーク化が進みません。
そのため、経理規定で押印を不要にしたり、伝票承認は電子印で済むように変更したりするなどの対策が必要でしょう。
月次業務では、月ごとの会計データをもとに、分析資料や報告資料などを作成する会社もあります。こういった資料も、紙での印刷が必要なくなれば、テレワークが可能になります。
月次で作成される資料は、多くの場合は社内資料であるため、ペーパーレス化を進めやすいといえるでしょう。
決算業務においては、税理士とのデータ連携が重要です。
請求書などの資料が紙である場合、税理士から提出を求められれば、それに応じて出社が必要となります。
一方で、クラウド会計ソフトを導入しており、さらに経理に関する資料もデータ化できていれば、決算業務においても完全にリモートで進めることが可能です。データの共有やアクセスが容易になるため、よりスムーズな対応が期待できます。
経理業務のテレワーク導入を成功させるには、急に環境を変えるのではなく、段階を踏むことが大切です。ここでは、成功のポイントを確認しましょう。
経理業務をテレワーク化する前に、社内の業務フローを整理しましょう。
日次・月次・年次業務を区分し、その中での業務フローを整理して表や図にまとめることで、テレワーク化しやすい業務を明確に可視化できます。
経理のテレワーク化は、既に述べたとおり、導入を決定してから一度に進められるものではありません。
システムの契約やアカウント発行などの準備が必要であるため、システムが多ければ多いほど、それだけ時間もかかります。そのため、すべてを一度に進めるのではなく、時間に余裕を持った状態で段階的にアプローチすることが大切です。
また、新しいシステムや勤務環境に抵抗のある社員もいるでしょう。
そのような場合、まずはシステムに慣れ親しんでいる社員だけが試験的にテレワークをおこなうか、あるいは、交替でテレワークを実施するなど、段階的な導入を通じてスムーズなテレワーク環境を構築していきましょう。
経理は、資料の手渡しがよくおこなわれる部署です。
そのため、テレワークにより社内に経理担当者がいない状態になると、資料の受け渡しがスムーズにおこなえなかったり、紛失したりするリスクが高まります。
このようなケースでは、資料を電子化して手渡しの頻度を少なくすることが大切です。また、郵便ボックスを活用するなど、従業員や他部署の方々の理解と協力を得るとよいでしょう。
購買や販売・営業事務に携わる経理社員は、顧客とのやり取りが頻繁にあるでしょう。
このようなケースでは、テレワーク化すると、顧客との連携がスムーズにいかなくなる場合があります。
そのため、専用のスマートフォンを用意したり、コミュニケーションツールをメールやチャットにしたりするなど、顧客の理解と協力を得ておくことも大切です。
テレワークにおいては、リアルタイムに社員の行動を確認することができないため、正確に業務を遂行できているかや進捗に問題がないかなど、定期的に勤務状況を確認することが重要です。
特に、社歴の浅い人への指導や重要な情報共有などは、対面のほうが効果的な場合もあります。
テレワークを推進しつつも、出社しないことにこだわるのではなく、状況に応じて柔軟に対応することが成功のポイントです。
テレワークが始まると、社員同士のコミュニケーションの方法が大きく変わります。
出社の場合は、対面やメールでのコミュニケーションが主流のケースも多いようですが、テレワークでは、できるだけリアルタイムにコミュニケーションがおこなえる「チャットツール」がよく利用されています。
また、社外の方とのコミュニケーションにおいても、対面でのやりとりは減少傾向にあり、Zoomなどのオンライン会議ツールを用いて打合せをおこなう機会が増えています。
こういったツールを活用し、慣れていけば自宅から出なくとも従来に近い業務を遂行することが可能なため、積極的にコミュニケーションツールを活用するようにしましょう。
投資の様な支出、戦略的経費から経営を考える経理業務は、環境さえ整えばスムーズにテレワーク化を進めることができます。
経理担当の社員だけではなく、他部署の社員や取引先との連携も必要となりますが、社会全体でテレワーク推進の動きがあるため、社内外の理解も得やすい状況にあるでしょう。
テレワークは、通勤時間の削減やより快適な場所で仕事が可能となるため、従業員の満足度が大幅に向上する可能性があります。
また、テレワークはペーパーレス化とも密接な関係があるため、紙や保管コストなど経費削減も期待できます。
経理業務のテレワーク化はメリットが大きいため、段階的に導入を進めるとよいでしょう。
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このコラムの著者 : 長縄 龍哉
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