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手形取引の危険さと無くし方

支払手形は麻薬と同じ

投稿日:2020年08月09日

更新日:2023年05月01日

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この記事を読むのに必要な時間は約 8 分です。

手形取引の背景

手形取引は急激に減少しています。
2017年の交換高はピーク時の1割以下で、交換所も減り続けていいます。その原因は企業のコスト削減や現金決済の拡大が考えられます。

手形交換は、金融機関が手形や小切手などを持ち寄って交換する民間の決済制度。明治12年に大阪手形交換所が最初に開設され、中小企業の資金決済の重要な手段で、右肩上がりで増加してきましたが1990年を境に一気に減少しだしました。

大企業が率先して手形印紙税や管理にかかる人件費などのコスト削減に取り組み、現金決済の広がりが中小企業にも波及したことが要因となっています。

つまり、90%以上の企業が手形を止めているのに、いまだに手形取引を続けている企業は環境に適応できない絶滅危惧種(倒産予備軍)なのです。
でも、倒産予備軍の手形取引をしている三流アホ経営者はそのことにも気づいていないでしょう。

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手形取引の危険さ

新型コロナウイルスショックは、手形取引を撲滅するとても良いチャンスと思っています。手形についてネットで調べてみると「手形とは、将来の一定期日に一定の場所で、一定の金額を支払うことを記載した証券のことをいいます。手形は、決済の手段として商品代金や掛け代金の支払いのため、現金の代わりに用いられます。」とあります。

手形があるために企業の経済活動が複雑になっていると私は思います。そして、意志の弱い、考え方が甘い経営者が延々と手形取引を続け、そのために多くの不幸が発生していると思っています。
最悪の場合には企業経営者が命を絶つこともある麻薬でもあります。
まずは手形取引のメリットとデメリットを見ていきましょう。

手形取引のメリット

手形取引のメリットは振出人にも受取人にもあります。振出人のメリットの第一は、支払いの期日を延期することができることです。手元に現金がなくても、支払いの期日までに用意すれば良いためです。建設業等のように、仕事を行い経費の支出をするタイミングと、仕事が完了し入金されるタイミングが違う場合、支払手形で支払いのタイミングをずらすことで資金繰りを有利にすることが可能です。
第二のメリットは、金融機関からお金を借りた場合には利息がかかりますが、手形を振り出す場合には利息がかからないことです。無利息で支払い期日の延期をすることできるのです。

一方、受取人のメリットの第一は、手形を割り引いて現金化できることです。手形割引とは、支払い期日前に金融機関や業者に手形を買い取ってもらい現金化することです。その際、金融機関や業者に割引料を支払う必要がありますが、早急に現金が欲しい時など資金繰りの状況によっては有利になります。    

受取人の第二のメリットは、手形を受け取ることを了承する代わりに値引きなどの取引条件を有利に運ぶことが可能となることです。
以上の通り、手形取引のメリットは振出人・受取人共にメリットはありますが、どれをとっても甘~い経営者、あるいは資金繰りの苦しい経営者のメリットのみにあるように思います。

銀行口座のお金がなくなっていく恐怖

手形取引のデメリット

次に手形取引のデメリットです。手形取引には強烈なデメリットがあります。特に振出人のデメリットがあまりにも大きいです。振出人のデメリットの第一は不渡手形になるリスクです。手形は期日までに支払われない

ことを「手形が不渡りになる」と表現します。

1回目の不渡りで銀行に通知がいき、半年以内に2回目の不渡りを出してしまうと銀行取引停止処分になります。
こうなると事実上の倒産です。
また一旦不渡りを出してしまうと、銀行は新規に貸付をしてくれません。この倒産の恐怖のために、多くの経営者が命を落としたことでしょう。

また資金繰りが煩雑になるデメリットもあります。支払手形を発行するときに一度資金繰りを行い、更に支払手形を決済するときに2度目の資金繰りが必要になります。
一方、受取人にもデメリットがあります。受け取った手形が不渡りになれば、その現金を回収できなくなります。さらに手形期日が長くなるほど現金回収不能の金額が大きくなります。世の中の多くの連鎖倒産はこの手形取引が原因と言われています。

以上の内容をまとめてみますと振出人のデメリットは支払手形が不渡りとなって倒産してしまうこと、受取人のデメリットは現金回収不能となる金額が大きくなることにつきます。
何故、このような大きなリスクを伴う手形取引を延々続けているのでしょうか?それは経営者に能力が無いからです。あるいは現状を変える勇気が無いからです。

手形取引のやめ方

それでは企業活動の諸悪の根源である手形取引を止める方法をみていきましょう。具体的な内容は、私の著書「大倒産時代の会社にお金が残る経営」(明日香出版社)のP128を参考にしてくださいね。

まずは支払手形を発行している会社からです。
支払手形は前述の通り、支払期日までに全額支払いをしなければ不渡りとなります。6ヵ月以内に2度不渡りを出すと銀行取引停止となります。

こうなってしまったら、実質的に商売を継続することは出来ず、倒産するしかありません。
このペナルティはあまりにも大きすぎます。私は過去に100社以上の中小企業に支払手形の発行を止めさせてきました。自称、支払手形を止めさせるプロです。

支払手形の止め方には大きく分けて3つあります。

その1支払手形残高分だけ銀行借り入れをして一気に手形残高をゼロにする方法

この方法は短期的に手形残高がゼロになるのでお勧めの方法です。
ただし支払手形は負債であるにもかかわらず利息がかかりませんが、銀行借り入れにすると利息が発生する問いデメリットがあります。
しかし、これは本当にデメリットなのでしょうか?人からお金を借りておいて利息を支払わない方が非常識なのです。
言い方は悪いかもしれませんが、「あなたの会社の商品を買ってやるから支払期日を延ばし、無利息にしろ」と言っているようなものです。
時代錯誤の経営者ですね。

具体的事例としてM社の例をご紹介します。
M社は売上8億円、経常利益5千万のメーカーです。支払手形残高が約2億2千万円ありました。
金融機関からの借入金は5千万円程度です。借入余力は約3億円ありました。
そこで、支払手形残高2億2千万円全額金融機関から借入をして一気に支払手形を無くしました。
この借入金を5年で返済して今では無借金経営かつ支払手形も発行していない超優良企業へと変貌しました。

支払い手形の止め方その2 
支払手形の発行金額を徐々に上げながら5年程度で全額止める方法

この方法は3つの解消方法の中で一番楽そうに見える方法ですが、実際には一番厳しい解消方法です。
支払手形の発行金額を年々引き上げながら支払手形残高を徐々に減らしていきます。そして、5年ほどですべての支払手形をなくす方法です。

例えば、初年度は100万円以下の取引は現金決済にします。そして2年目は500万円以下は現金決済に、3年目は1000万円以下、4年目は3000万円以下、そして、5年目はすべての取引を現金決済にします。
このような方法は一見楽に見えますが、5年間資金繰りに苦しむことになります。
理由は現金決済になった取引と支払手形を落とす資金の両方を5年間も調達しなければならないため、経営者にとって精神的にきついのです。

さらに中小企業の業績が5年間順調であることなどは稀で、殆どの企業が5年間の予定が大幅に伸びてしまいます。
特に4年目、5年目となると大口の取引先が残っているので、現金決済にすることは困難を極めます。
一見楽に見えるこの方法は、よほど意思の固い経営者にしかお勧めしません。

支払い手形の止め方その3
預金を毎月定期的に積立てていき、預金残高が支払手形全高を超えたときに一気に相殺する方法

私の一番のお勧めはこの③の方法です。支払手形残高を5年後に無くすために、まず毎月定期預金を一定額ずつ積んでいきます。
そしてこの積み立てた定期預金の金額が支払手形の残高を超えた5年後に、一気に支払手形の発行を止めてすべてを現金取引にすると共に、積み立てた定期預金を過去に発行した支払手形の決済資金に充てるのです。

例えば支払手形残高が1億2千万円あるとします。
5年で支払手形を止めるとすると、毎月200万円の定期預金を60ヵ月積んでいけば、5年後に定期預金の残高が1億2千万円となり支払手形を発行を止めて現金取引のみにすることができます。
この方法の良いところは、定期預金を積んでいる5年間の間に今回の新型コロナショックのような大きな経済変動があっても、支払手形をなくせるということです。

こうした経済変動で売上は半減したとすると、支払手形残高も半減しているはずです。
上記の例であれば、支払手形残高が6千万円位に減っている一方、2年半で定期預金残高は6千万円になっているので、何と2年半で支払手形残高をゼロにすることができるのです。

具体的にK社の例を見てみましょう。
売上15億円、経常利益4千万円、支払手形残高が2億4千万円ありました。
K社の社長は一大決心をして10年後に支払手形をゼロにするために毎月200万円ずつ定期預金を積むことにしました。
5年ほど経過して定期預金が1億円を超えたころにリーマンショックが来ました。売上は半分以下になりましたが、支払手形の残高も1億円になりました。ここが一大チャンスです。売上は半減していますが勇気をもって定期預金1億円で一気に支払手形残高をゼロにしました。K社も今では実質無借金経営、すべて現金取引の超優良企業となりました。

如何でしたでしょうか?
いずれにしても支払手形を止めるためには社長の強い決意と勇気と行動力が必要です。

「俺たちの業界は特殊だから支払手形を無くすのは無理」と、端から思考停止している三流アホ経営者は、業界が特殊なのではなく「あなたの頭の中が特殊」だと言いたいですね。

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このコラムの著者 : 曽根 康正

SMCグループ顧問、1959年(昭和34年6月8日)に岐阜県多治見市で生まれる。 「社外重役の立場から専門能力を発揮し中小企業を支援する」 というグループ経営目標のもと、東海エリアにおいてNo.1の会計事務所を目指す。

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