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負債を減らすための借入金・設備投資の返済期間を公認会計士が解説

負債を減らすための借入金・設備投資の返済期間を公認会計士が解説

投稿日:2019年05月12日

更新日:2023年03月17日

経営者が知っておくべき「利益とキャッシュの最大化」セミナー

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

資金繰りの第3の支出「負債の減少」に関して解説します。

誰でも負債は少なくしたいと思っています。しかし、この負債を減らしたいと思う心が要注意なのです。それは負債を減らすためにはキャッシュを支出しなければならないからです。実力以上に負債を減らすと、手持ちのキャッシュが少なくなります。最悪の場合には、負債と共にキャッシュも減ることで、資金ショートしてしまいます。

借入金返済の考え方

企業は、自社の実力に合った身分相応の借金の返済金額を計算することが出来ます。この金額を超えて返済するとキャッシュが減ってしまうのです。負債の代表格は借入金なので、まずは借入金の返済から見ていきましょう。
今からお話しすることはとっても大事なことですので、必ず根本から理解するようにしてください。
あなたの会社は1年間でいくらの借金を返さなければならないのか分かりますか?
これさえも分からないのであれば、経営者を辞めた方が良いですよ。

この「1年間に返さなければならない借金」は、貸借対照表の流動負債の中に「1年以内返済予定の長期借入金」として掲載されているはずです。
「え~っ?御社の貸借対照表には、1年以内返済予定の長期借入金の勘定科目が無い?」
あなたの会社の貸借対照表は財務諸表規則違反です。それよりもその貸借対照表は全く使い物になりません。貸借対照表を読めない会計事務所に作成してもらったのでしょうね。

貸借対照表の流動負債のうち「1年以内返済予定の長期借入金」以外の資産負債が一定だとしても、この「1年以内返済予定の長期借入金」は証書借入として約定で決まっている金額を必ず返済しなければなりません。
つまり、この金額の分のキャッシュを確保していなければ、借入金の返済をすることができません。
借入金の返済財源は下記の算式で計算することができます。

返済財源 = 当期利益 + 減価償却費

資産・負債が一定という条件の下では、必ず当期利益の金額だけはキャッシュが増えます。そして、当期利益に加算されている減価償却費は、過去にすでに支払いが済んでいる建物や設備などの、各期に配分する計算上の経費なので、キャッシュの支払はありません。したがって、当期利益と減価償却費の合計額はキャッシュが増加する、と考えることができるわけです。
そして、この返済財源を全額「1年以内返済予定の長期借入金」の返済に充てても、資産も減少しませんし、負債も増えることがありません。

三流アホ経営者ほど高級外車や高級国産車(レクサスなど)に乗ります。

達成しなければならない利益はすでに分かっているはず

ここからは、この「1年内返済予定の長期借入金」と「返済財源」について、もう少し詳しく具体的にみていきましょう。

1年内返済予定の長期借入金の金額のキャッシュ、つまり返済財源を確保しなければいけません。
返済財源 = 当期利益 + 減価償却費
A社の貸借対照表の流動負債の「1年以内返済予定の長期借入金」が15,000千円だとします。
これは1年間で必ず返済しなければならない金額です。そして、当期利益が12,000千円、減価償却費が6,000千円で合計18,000千円だとします。

返済財源18,000千円 = 当期利益12,000千円 + 減価償却費6,000千円

「1年以内返済予定の長期借入金」15,000千円 < 返済財源18,000千円

ですから、15,000千円を返済しても3,000千円のキャッシュが残ることになります。

さて読者の皆さん、当期利益は1年間事業を行った結果に出た利益だと思っていませんか?
それは大きな間違いです。そんな甘い考えをしているから会社を潰すのです。
必ず達成しなければならない当期利益は、事業開始前から分かっているのです。

A社であれば、「1年以内返済予定の長期借入金」15,000千円、減価償却費6,000千円はその期の事業開始前から分かっているので、当期利益は15,000千円-6,000千円=9,000千円は絶対に達成しなければならないのです。

もしA社が30,000千円の「1年以内返済予定の長期借入金」があったとしたならば、
30,000千円 - 6,000千円の減価償却費 = 24,000千円
の当期利益を達成しなければなりません。

こんな簡単なことがわかっていないので、三流アホ経営者の会社はキャッシュが不足してしまうのです。

そして前述しましたが、借入金の返済期間が短いほど「1年以内返済予定の長期借入金」の金額は大きくなります。例えば、10,000千円の借入れの返済期間が5年であれば、「1年以内返済予定の長期借入金」は2,000千円になり、返済期間が10年であれば1,000千円です。
したがって、返済期間を短くするほど「1年以内返済予定の長期借入金」が増え、達成しなければならない当期利益の金額も大きくなってしまうのです。
逆に借入金の返済期間が長いほど「1年以内返済予定の長期借入金」の金額は小さくなります。これにより達成しなければならない当期利益の金額も少なくて済み、返済できないというリスクが小さくなります。

借入の返済期間を何年にするのかは、経営のとても重要な意思決定事項なのです。

設備投資の金利と返済期間

設備投資をしたときの金利と返済期間についてお話していきましょう。
耐用年数と借入金返済期間の関係が分からなければ借金をしてはいけません。この関係はとても重要ですが、これを理解している中小企業の経営者は本当に少ないです。

企業が倒産していく場合、直接的には資金がなくなって倒産していきますが、資金が無くなってしまうその根本的な原因の多くは、この「設備投資と借入金の返済期間」のことを経営者が理解していないために、身分不相応な借入により資金調達したことにあります。

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金利よりも返済期間を重視する

銀行借入する場合、意思決定をしなければならない基本的なことが2つあります。金利と返済期間です。どちらも重要な要素ですが、どちらを優先すべきかと言えば、金利ではなく返済期間でしょう。
下の例で見てみましょう。

1,000万円の機械装置を全額借入金(毎年4年後の期日に1年分全額返済する)で購入することとします。

<A銀行の提案>
10年返済で金利3%
<B銀行の提案>
5年返済で金利1%
さて、どちらを選択したらよいでしょうか。

まず、A銀行の提案を検討します。
初年度の元本返済金額が100万円(1,000万円÷10年)、金利は1,000万円×3%で30万円です。
したがって出ていくキャッシュの金額は130万円です。

一方、B銀行の提案を見てみましょう。
初年度の元本返済金額は200万円(1,000万円÷5年)、金利は1,000万円×1%で10万円です。
こちらの提案では、出ていくキャッシュの金額は210万円です。

上記の結果はA銀行のキャッシュアウトは130万円に対して、B銀行キャッシュアウトは210万円です。キャッシュアウトが少ないほどリスクが低くなりますので、機械装置の借入はA銀行の提案を採用すべきです。

金利は安いに越したことはありませんが、私は金利が高くて資金ショートした企業を一度も見たことはありません。
一方、返済金額が大きすぎて資金ショートして潰れた企業は何社も見てきました。

勉強不足の三流アホ経営者は、金利のことしかわからない、というより金利のことしか理解できないために、金利の高い安いで判断をしてしまいます。
本当に大事なのはキャッシュアウトが大きい返済金額、つまり返済期間こそが、最も重要な経営上の意思決定事項であるということを理解できないのです。
借入期間は経営上の最重要意思決定事項です。

設備投資の耐用年数と返済期間・返済金額の関係

設備投資した資産の耐用年数と銀行借入の返済期間の関係も非常に重要です。
もっと言えば、この関係が理解できない経営者は、借入金で設備投資をしないことです。

「耐用年数」とは設備投資金額を配分して経費化する期間を言います。
具体的な事例を使って耐用年数と返済期間の関係を見ていきましょう。

機械装置30,000千円(耐用年数10年:簡略化のために減価償却費は毎期3,000千円とします。)を銀行借入で購入するとします。
3つの返済期間を検討します。

この会社は毎期、当期利益が赤黒トントンの0円と仮定します。

A案 返済期間5年    返済期間 < 耐用年数
  1年間の返済金額6,000千円 > 当期利益0円 + 減価償却費3,000千円 
B案 返済期間10年   返済期間 = 耐用年数
  1年間の返済金額3,000千円 = 当期利益0円 + 減価償却費3,000千円 
C案 返済期間15年   返済期間 > 耐用年数
  1年間の返済金額2,000千円 < 当期利益0円 + 減価償却費3,000千円 

上記の3つの案を見てみると、A案は返済期間5年ですが、とてもこの会社では返済することができません。
毎期、6,000千円-3,000千円が不足します。
従って当期利益がゼロでは返済できません。
不足額の3,000千円以上の利益を計上しないと返済できないのです。

B案は返済期間が10年ですが、返済金額3,000千円で返済財源も3,000千円なので、ちょうど返済できます。
しかし、1円でも赤字になると全額を返済することができなくなります。

C案は返済期間が15年ですが、返済金額は2,000千円で余剰金が1,000千円あります。
1,000千円の赤字になったとしても充分返済ができます。(税金を考慮するともう少し赤字が大きくても返済できます。) 
 
上記のように返済期間と耐用年数の関係を見てくると、最もリスクが少ないのは、返済期間が耐用年数より長いC案の15年であることがわかります。
借入をする時に最も重要な経営の意思決定事項は、借入金の返済期間なのです。可能な限り返済期間は長くしましょう。

借入金の返済は身分にあった返済金額にしましょう。
あまり早く返済し過ぎてキャッシュ不足にならないように、必ず返済期間を検討してください。

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支払手形の返済のコツ

負債は借入金以外にも支払手形、買掛金、未来金、前受金、預り金などがあります。
これらも負債なので減らそうとすればキャッシュが流出します。
支払手形を除いた負債は、あまり性急に減らそうとしないことです。

最も危険な負債の支払手形ですが、この負債は他の負債と全く性格が異なります。
支払手形は支払期日までに全額支払いをしなければ支払は不渡りとなります。6か月以内に2度不渡りを出すと銀行取引停止となります。
銀行取引停止となれば実質的には商売はできませんので倒産するしかありません。

このペナルティはあまりにも大き過ぎます。前述しましたように支払手形はあまりにも危険な流動負債なので即刻発行を止めるべきです。
過去に私は100社以上の中小企業に支払手形の発行を止めさせてきました。これは私の使命です。

支払手形の止め方についてはノウハウがあります。支払手形は不況の時に辞めるのが基本です。
景気が良くて業績が良い時に支払手形をやめた方が良いと思われるかもしれませんが、通常業績が良いと支払手形の残高は大きくなってしまっています。金額の大きな残高の支払手形を一気になくすことは不可能なのです。
ところがリーマンショックや東日本大震災などで景気が悪くなった時は、支払手形の残高が少なくなっていますので、キャッシュがあれば支払手形を一気に無くしてしまうことができます。

私は支払手形を発行して平気でいる経営者を見ると、ぬるま湯に浸かった三流アホ経営者に見えます。
支払手形はどんなことをしても無くしてしまいましょう。支払手形をなくすための方法はプロである私に聞いてくださいね。

SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 経営改善 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

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このコラムの著者 : 曽根 康正

SMCグループ顧問、1959年(昭和34年6月8日)に岐阜県多治見市で生まれる。 「社外重役の立場から専門能力を発揮し中小企業を支援する」 というグループ経営目標のもと、東海エリアにおいてNo.1の会計事務所を目指す。

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