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コロナで浮彫になった財務戦略、緊急時の資金繰り点検方法

新型コロナに打ち勝つ資金繰り

投稿日:2020年03月17日

更新日:2023年03月17日

経営者が知っておくべき「利益とキャッシュの最大化」セミナー

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

今回は「コロナショックの資金繰り」についてお話をしたいと思います。
私は企業経営において、「平常時の財務戦略」と「緊急時の財務戦略」があると思っています。

この2つは全く違います。大雑把に言ってしまえば、平常時は可能な限り利益を最大限大きくして、借入金の返済を優先しながらキャッシュを増やしていく財務戦略をとります。
一方、緊急時の財務戦略は、利益を度外視して、まず手元資金を増やすことのみに焦点を合わせた財務戦略にします。
どちらかと言えば利益ではなく借入金を増やしてでも手元資金を増やすことを優先します。
緊急時には何が起こるか予測できないので、少しでも多くの手元資金を持つようにするのです。

見方を変えると、平常時の財務戦略が利益による資金調達を優先し、重要なKPIは自己資本比率とする一方、緊急時の財務戦略は借入による資金調達を優先し、重要なKPIは当座比率となるのです。

平常時の財務戦略

まずは参考のために平常時の財務戦略を記述します。
平常時はとにかく利益を最大限大きくして税金も沢山支払い、会社にキャッシュをドンドン残していきましょう。売上を最大にし経費を最小にして、利益を極大化します。
多くの節税は、経費を増やすことで利益を減らし税金を少なくする方法です。これは節税でもなんでもなく、業績を悪くして利益が減っただけです。
平常時の財務戦略の目標KPIは以下の通りです。

自己資本比率の目標は50%以上、最終目標は70%以上 当座比率の目標は150%以上、最終目標は300%以上

コロナショックを乗り越えて平常時になったら、是非この財務戦略を実施して下さい。間違っても利益を最小化する節税はしない方が良いです。あなたの会社の寿命を縮めるだけです。
この厳しいコロナショックの教訓を生かして、平常時は可能な限り利益を最大限大きくして、借入金の返済を優先しながら手元資金を増やしていく財務戦略をとりましょう。

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緊急時の財務戦略

私の過去の経験でも、リーマンショックや東日本大震災時にも緊急時の財務戦略をとりました。
利益を増やす云々以前に借入金を増やしてでも手元にお金を集めます。

しかし、実際に売上が落ち込んでから資金を調達しようとしても、思うようにはできません。多くの経営者は、売上が激減し手元資金が大きく減少してから、資金調達つまり借入をするように動き出します。
でも、それでは遅いのです。自社の売上が減少しだす前に、キャッシュが減少しだす前に、借入による資金調達を迅速に行う必要があります。
リーマンショックの時も東日本大震災の時も、これから起こることは全く予測できていませんでした。企業が潰れるときはキャッシュがなくなった時なので、緊急時は如何に資金残高を多くするかだけを考えなければなりません。売上を増やすことや赤字から脱出する方策などは二の次で良いのです。まずは手元資金確保最優先です。
利益を減らす節税をしていた会社は、税金を減らしたツケで資金減少・資金不足という致命傷を負うことになります。

緊急時の資金繰り点検

経済環境の大きな変化があった時に中小企業の経営者の方がまず考えなければいけないのは、資金の確保です。会社のお金が無くなれば倒産します。倒産しないための資金を確保しなければならない、これは経営者としての責務です。では、いくらぐらい、どのように資金を確保すればいいのでしょうか?

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1.手元資金はいくら必要か

手元資金の目安として平均月商や固定費の3か月分などと言われますが、次の3つの視点で資金繰りをチェックするとよいでしょう。

①手元資金で1年間分の給料を払えるか

会社は組織です。組織は人で成り立っており、人がいなければ会社は立ち行かなくなります。そのため、従業員へ給料を払い続けなければ事業は存続できません。売上が激減しても1年間従業員へ給料払い続けることができる資金があれば、資金繰りは回るし事業は存続できるでしょう。売上が無くなっても今後1年間は給料が払えるだけのキャッシュをもっているということがわかれば、従業員も安心して業績回復に力を発揮してくれるでしょう。自社で働いてくれる従業員の生活を守るのも、経営者の責務です。

②手元資金で半年分の固定費が払えるか

売上がゼロになっても支払いを免れないものが、給料や家賃、リース料等の固定費です。そういった固定費を少なくとも半年間は払えるキャッシュを持っていれば、資金繰りは保たれて事業継続できるでしょう。この半年間の時間的猶予があれば、売上減少等に対する打開策の構築と実行が可能です。ここで見落としがちなのが返済です。返済も支払いを免れないものなので、固定費に返済額も含めて必要キャッシュ額を算出しましょう。

③このままだとどこで資金が尽きるのか

そうはいっても企業ごとに影響する度合いは様々です。売上が減少するにしても5割減少なのか、3割減少なのか。想定される売上減少が続いた場合、どこで会社の資金が尽きるのかをシミュレーションしておきましょう。それにより、どれだけ時間の猶予があるか、あといくらあれば資金がまわるのかがわかります。

2.資金確保方法

必要な資金額がわかったら、それをどう確保するか。中小企業にとってはなんといっても一番の方法は融資です。大きな経済環境変化があるとき、中小企業の資金繰りを支えるために政府が様々な制度を出しますので、積極的に利用しましょう。それを利用するためのチェックポイントは以下の3つです。

①保証料にこだわらない

いわゆる信用保証協会付融資ですが、保証料が発生するために嫌がる方がいます。この制度は大企業に比べて信用力の乏しい中小企業が融資を受けやすくするために公的機関が保証してくれるものです。保証料も事前に概算を把握し、その分を加味して申込額を設定することは可能です。自治体によっては保証料を補助してくれます。保証料をケチったために資金確保を長引かせるのであれば、本来の目的を見失っています。

②返済額が増えないように借換を利用する

せっかく資金確保ができてもその後の返済額負担が多くなれば、将来の資金繰りが厳しくなります。できるだけ借換を利用し、返済額が増えないようにしましょう。うまくいけば今より返済額が減少する可能性もあります。

③銀行の提案を鵜呑みにしない

特別な融資制度は融資額が100%保証されるものがあり、銀行にとってノーリスクで融資を増やせるチャンスです。そのため、積極的に利用提案をされることがあります。ただ、その会社の資金繰りや借入状況の全体を見て提案してくることは稀です。できれば社外の専門家にその提案通り融資を受けていいものかチェックを依頼しましょう。

過度な借入となっていないか、返済額が大きくならないか、おかしな条件がついていないか、がポイントです。
経済環境が大きく落ち込むときは、企業にとって正念場であるとともに、企業の真価が問われていると思います。事業が存続できるキャッシュを迅速に確保し、困難な状況を打破しましょう。

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助成金での資金繰りも視野に

融資を受けても返済猶予を受けても、売上が激減して赤字が続けば、キャッシュがみるみる無くなってしまいます。
そんなときに助成金を活用して資金を調達するという方法もあります。こうした助成金も積極的に活用したいものです。

このチャンスに支払手形をやめる

支払手形は支払期日までに全額支払いをしなければ不渡りとなります。銀行取引停止となれば実質的には商売はできませんので倒産するしかありません。
このペナルティはあまりにも大き過ぎます。支払手形は最も危険な流動負債なので、即刻発行を止めるべきです。
通常は景気が良くて業績が良い時に支払手形をやめた方が良いと思われるかもしれませんが、景気が良くて業績が良いと通常支払手形の残高は大きくなり、一気になくすことは不可能なのです。
支払手形は不況の時に辞めるのが基本です。

ところがリーマンショックや東日本大震災、そして今回のコロナショックなど、景気が悪くなった時が支払手形をやめる大チャンスなのです。それは景気が悪い時は支払手形の残高が少なくなっていますので、相応のキャッシュがあれば支払手形を一気に無くしてしまうことができるからです。キャッシュが無ければ、借入をしてでも、支払手形の残高が少ないときに一気になくすのです。コロナショックの機会に最も危険な支払手形を無くしてしまいましょう。

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最後に

余談ですが、最近とんでもない税理士がいます。節税アドバイスをする会計事務所は経営者から要望されてしていると思っていましたが違う場合もあるようです。
利益が出て多くの税金を支払うと税務調査を受ける確率が上がります。
会計事務所でもこの税務調査を恐れている事務所があると聞きました。恐らくそれは、税務処理に自信が無いために否認事項が出ることが怖いからではないでしょうか。これはその会計事務所の能力不足の一言です。節税対策の名を借り、利益を減らし、税務調査から逃れようとするのは無責任の一言です。
そんな会計事務所を回避するためにも経営者の方には経営に関する知識を付けて頂きたいと思います。

SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 経営改善 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

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このコラムの著者 : 小川弘郎

中小企業診断士 金融機関OB 20年勤務した金融機関在籍時には融資担当や企業改善支援担当を歴任、融資現場における多数の経営支援や事業再生の実践経験を持つ。会計業界に転身後は経営計画に基づく経営サポートを行っている。経営戦略、経営管理、資金繰りが専門。

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