投稿日:2018年11月03日
更新日:2023年03月17日
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将来返済しなければならない借入金のうち、資金の都合がつくまで返済をする必要がなく、かつ利息の支払いをしなくてよい資金調達方法があります。それは経営者からお金を借りる、いわゆる「役員借入金」です。
中小企業の経営者がプライベートで蓄えている資金の一部を、運転資金の確保のために一時的に会社に入れ、会社の資金に余裕ができたら返してもらうものです。
経営者からみれば会社への貸付金、会社からみれば経営者に対する借金ということになります。
出資を違うところは、株券の発行や登記などの費用をかけることなく会社にお金を入れることができますので、会社はこれらの支出を抑えることができます。
出資をした場合、出資額の半分以上を資本金としなければいけません。
そのため、資本金が1億円を超えれば、法人税の15%軽減税率(通常23.2%)や少額資産の損金算入の特例などが適用できなくなります。
また資本金が3千万円を超えると、租税特別措置法の税額控除を受けることができなくなります。
役員借入金として資金を会社に入れれば、資本金の増加を伴いませんので、中小企業に適用される優遇税制の適用を受けることを継続できます。
経営者としては、出資だとお金を返してもらうことはできませんが、貸付けであれば会社に入れたお金が戻ってきます。
会社の利益を株主に分配する配当金は、法人税の計算上費用に計上することはできませんが、借入金に対する支払利息は、費用に計上することができます。
したがって会社の利益が出た場合には、株主である経営者への配当ではなく、役員借入金に対して利息の支払いをすることも検討することができます。
(注)配当と違い、受け取った利息に源泉所得税は課されませんが、雑所得として所得税の確定申告が必要になります。
役員借入金は貸借対照表上、負債の部に計上されます。単純に考えれば、役員借入金によって自己資本比率が下がることとなります。
以前は、役員借入金も通常の借入金と同様に会社の借入の状態と考えて評価されてきました。
しかし最近は、一般的な借入金とは異なり、経営者が会社にお金を入れているということで、ある意味自己資本と同じ取り扱いとして評価されるようになってきております。
会社にとってメリットの多い役員借入金ですが、集められる資金は、経営者かその親戚など身近な人のお金です。
したがって会社に入れられる金額にも限界がでてきます。
経営者が死亡した場合、会社の株式を評価するに当たり、役員借入金は負債として取り扱われます。
そのため役員借入金があると、その分株式の評価額は下がることになります。
債務超過であれば株式の評価額は0円です。
しかし、役員にとっては貸付金と同様、相続税の課税の対象となります。
つまり、実質的に返ってこない会社に対する貸付金に対しても、相続税が課税されてしまいます。
会社の資金繰りが厳しく役員借入金が膨らんでしまうと、将来、経営者が死亡した際に相続税が大変になる場合があります。
そのため役員借入金についてしっかりとした対策が必要になります。
貸付金の債権放棄は、債務免除益として収益に計上されますが、会社に繰越欠損金があれば、その範囲内で放棄することで法人税の課税はありません。
ただし、会社の株式の評価額が増えることによるみなし贈与として、贈与税の課税がされる場合があります。
借入金を資本金に振替えることで、経営者の貸付金を株式に組み替えをします。
役員報酬を減らし、その分役員借入金の返済を受けることで、会社の利益を生み出すだけでなく、経営者の負担する源泉所得税や住民税を減らすことできます。
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このコラムの著者 : 舩田 卓
1972年愛媛県生まれのA型。 愛媛県立松山商業高校卒業後、東京IT会計専門学校に進学。 在学中に税理士試験を全国最年少20歳で合格。 そのまま専門学校の専任講師となり、税理士試験の受験指導を担当。 22年間務めた講師の道から飛び出しSMC税理士法人に入社。