投稿日:2020年01月12日
更新日:2023年05月25日
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ピーター・ファーディナンド・ドラッカーは、「マネジメントの父」と呼ばれ、その名を聞いたことのない経営者はいないのではないでしょうか。
多くの経営者にとって利益が目的になっていますが、ドラッカーは利益について少し違った考えを持っていました。
ドラッカーにとって利益とは、企業が社会的存在として明日も意味ある活動をするための「条件」あるいは「手段」であるというのです。
さらに利益には5つの役割(機能)があると提唱していますが、その意味について分かりやすく解説します。
目次
ドラッカーは、その教えのなかで「企業は社会における富の創出機関」と位置付けています。 そして企業活動の結果として表れる利益には、以下の5つの役割があるというのです。 これらを読み解くことで、ドラッカーが考える企業・組織のあるべき姿が見えてきます。 ドラッカーは、企業にとって利益は目的ではなく手段に過ぎないとしますが、ドラッカーにとって企業の目的は何になるのでしょうか。 ドラッカーがいう「顧客の創造」とは、顧客満足であり、顧客に価値を提供することです。その活動が機能していて、お客様の満足度が高ければ、結果として売上が上がり利益が伸びることになるでしょう。 利益は企業にとって、その事業がお客様にとって価値があるか(有効であるか)、しっかり儲かる仕組みになっているか(健全であるか)を判断する基準となります。 利益が思うようにでないということは、事業内容や経営状況が悪い結果であり、ドラッカーに言わせると「事業の有効性がない、もしくは健全性が低い」ということです。 先ほども「利益が組織を存続させ、雇用を維持し、社会資本を形成するための条件」といったとおり、利益がなければ世の中の役に立ち続けることはできません。 日本の中小企業の約7割は赤字経営を続けているといわれますが、その数ほど倒産件数は多くありません。 利益が資本の蓄積を生むことは理解できましたが、その資本は永遠に貯め続けるものではありません。 利益が出ていれば、結果として資本が充実し資金的な余裕がうまれます。資金的な余裕は投資へのハードルを下げるので、結果として益々利益の拡大につながる好循環を生むでしょう。 企業にとって最も安全な資金調達方法は、利益による自己資本の拡充ですが、場合によっては第三者からの出資や借入などの資金調達が必要です。 資金調達をしようと考えたとき、資金を出す側の立場になれば分かりますが、配当や利息などのリターンよりリスクを回避しようと考えるはずです。 ドラッカーの利益に対する考え方は、独特ではあるものの企業のあるべき姿を端的に表しています。
利益をあげることは公益にかなうことであり、利益が組織を存続させ、雇用を維持し、社会資本を形成するための条件と定義しました。
お客様満足のバロメーター
彼は「企業という組織の目的は顧客の創造」と言い、利益は目的ではなく組織存続の条件であるとしました。
つまり利益が出ているということは、「顧客の創造」を遂行している結果、お客様満足度を測るバロメーターとなるのです。
これが利益だけを追求すると、顧客の創造どころか顧客離れを起こしてしまうことは、企業の失敗例で枚挙にいとまがありません。満足度が高ければ利益が伸びる
そしてドラッカーは顧客の継続的な獲得が必要で、そのためにマーケティングとイノベーションが重要だと説いています。事業の有効性と健全性を計る物差し
つまり企業にとっての利益とは、事業の有効性と健全性を計る物差しだといえます。事業内容、経営状況が悪ければ利益は伸びない
利益が出ない、もしくは赤字の状態だとしたら、事業自体がお客様にとってあまり価値がないことであり、儲かる仕組みになっていないといえます。将来のリスクへの備え
利益を出し続けることで、それが資本となり会社の体力を向上させることになります。
つまり資本を蓄積させることは、将来起こりうる様々なリスクへの備えになるのです。
ドラッカーの言葉を借りれば、「利益とは、リスクに対する保険料であり、経済活動の基礎となるものである」となります。企業はお金が無くならない限り倒産しない
赤字経営は倒産に至る要因ではあるのですが、企業が倒産する直接の原因は「資金の枯渇」です。
いくら利益を出していても、「黒字倒産」といわれる事例になってしまうのはお金がなくなったなれの果てといえます。
つまりお金が無くならない限り、多少の赤字を出していても倒産しないので、利益による資本の蓄積はリスクを回避するための保険料であることが分かるでしょう。将来の利益獲得のための準備
ごく一部の老舗企業を除けば、一つの事業が利益を生み出し続けることはなく、いつかは陳腐化するものです。
このようなリスクを回避するために、利益は将来利益を見込める事業に投資する必要があります。
これは将来の利益獲得のための準備活動といえるでしょう。利益が出ていれば益々利益を拡大出来る
勢いのある企業では、このようなケースが多く見られるのですが、尻すぼみになる企業はこれとは逆の流れになってしまいます。
ドラッカーの言う「イノベーション」を生むための投資です。資金調達のための誘い水
直接金融(出資の受入)にしても間接金融(借入)にしても、資金調達できるかどうかは事業による利益と、内部留保の厚さが決め手となります。
企業にとって利益は、事業のイノベーションと拡大に必要な資金の調達を確実にするための誘い水です。利益が出せない事業は資金調達が出来ない
利益が出ていない企業は、それだけでリスクが高い先とみられるので、資金調達の難易度が上がるばかりか、利息が高くなるなど資金調達のためのコストが高くなります。
経営者にとって頭の痛い話ですが、ドラッカーに言わせれば「企業は利益を出すことはあたりまえ」のことで、企業が社会的に機能しているかを測る尺度なのです。
人材をはじめ、貴重な経営資源を有効活用し、「顧客の創造」を目的だと考えれば、今までと違った目線で経営を考えられるのではないでしょうか。
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このコラムの著者 : 曽根 康正
SMCグループ顧問、1959年(昭和34年6月8日)に岐阜県多治見市で生まれる。 「社外重役の立場から専門能力を発揮し中小企業を支援する」 というグループ経営目標のもと、東海エリアにおいてNo.1の会計事務所を目指す。