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銀行借入以外の資金調達!中小企業における社債発行のメリット・デメリット

銀行借入以外の資金調達!中小企業における社債発行のメリット・デメリット

投稿日:2018年04月26日

更新日:2023年05月29日

経営者が知っておくべき「利益とキャッシュの最大化」セミナー

この記事を読むのに必要な時間は約 9 分です。

保証人・担保無しで多額の資金調達可能!満期期限も自分で決められるので長期安定資金として活用できる!官庁への届け出や、社債管理会社への委託も必要無し!
資金調達のプロである私達が社債発行のメリット・デメリットを解説します。

「社債」という資金調達方法をご存じですか。

国債は聞いたことがあるという人もいますが、社債のことはあまり知られていません。
まずはカンタンに社債のことをお伝えしましょう。

通常、中小企業の資金調達方法は3つあります。

1つ目は誰でも知っている「借金」。
2つ目は「資本金」。上場企業等はこの出資を投資家から集めていますが、中小企業は社長や親族が出資して、経営の資金とすることが殆どです。
3つ目は「利益」です。

では社債は・・・・?

社債は1つ目の「借金」にあたります。
中小企業が借り入れるのは銀行融資という間接金融。これに対し社債は、直接金融を活用して事業資金を広く集めるという資金活動なのです。

簡単に説明すると、社債とは「企業の借金証書」。企業が発行する債券のことを言います。
つまり○○円を借りました。利息は○%で○月○日に返済します。といった借金です。

それではなぜ銀行ではなく、社債を発行して借入をするのでしょうか?

それは、銀行からの借入は審査や金利条件が厳しく、また借入金の金額も限界があるのに対し、社債は一般の投資家から広く資金を調達する手段であること、そして満期が長いので、長期の資金を調達することが可能であることなどが挙げられます。

具体的には、「設備投資のために資金調達をしたい」「新商品開発のために多額の資金が必要」だが、金融機関の条件が厳しかったり、借入限度額が十分ではなかったりする場合、社債発行による資金調達を検討することがあります。

経営計画を作る目的と作り方、その重要性を解説

誰でも調達できる?「社債」ってどういう資金調達?

銀行からの借入よりも条件がラクで、資金の上限もなく、返済も長期に渡って待ってもらえる社債。
こんなありがたい資金調達をどうしたらできるのでしょうか?
そもそも誰が中小企業に貸してくれるのでしょうか?

残念ながら、銀行の金利より高くても、一般の投資家が知らない中小企業にお金を貸してくれるはずがありません。
中小企業が資金支援をお願いするのは縁故者です。

資金支援のお願いをする縁故者は、会社の財務状況の善し悪しよりも経営者への信用や仕事ぶりを評価します。
よって銀行より資金調達はしやすいと言われています。

そうは言っても、何の資料もなく経営者の信用のみでお金を貸してもらうのは難しいため、金利や期間・資金使途などが明確になっている資料を準備し、「社債を募集しますので、引き受けてください」と説明をして資金を調達するのです。

一方、資金を支援する縁故者にとっても、通常金融機関にお金を預けるよりは金利が高いので、「資産運用」という意味においてメリットがあります。

ここでは、届け出が必要な簡易な手続きで資金が調達できる「少人数私募債」についてお話ししていきます。

「少人数私募債」の特徴

少人数私募債とは、会社が身近な少数の人から事業資金として直接募るために発行する社債で、官庁への届け出や報告の義務がなく、社債管理会社への委託も必要がないため、時間と費用をかけずに簡単に発行することができます。

また少人数私募債による資金調達は、担保や保証人が不要で、長期の安定資金として活用することができます。

では、「少人数私募債」を発行するのに適している会社とは、どのような会社でしょう。

  • 社長個人と会社に信頼がある
  • 会社の現状や事業計画、そして未来像など情報公開できる
  • 事業計画を立案し、予算実績管理を行い、償還期限に返済ができる

このような会社が適していると思われます。

また「少人数私募債」を発行するためには、次の4つの条件が必要です。

1.法人であること

「少人数私募債」は、会社組織でなければ発行することができません。
したがって、個人事業主は、この「少人数私募債」という制度は利用できません。

2・社債の購入を勧誘する対象者の人数が50名未満であること

過去6か月以内に私募債を発行していればその人数と合算します。

3.社債総額を1口の金額で割った口数が50未満であること

社債は「1口いくら」というように設定します。その1口が最低額となります。社債を発行する場合には、社債総額と1口の金額を決定しなければなりません。 「少人数私募債」では、社債総額÷1口の金額(最低額)を50未満にする必要があります。

4.少人数私募債に譲渡制限を設けること

「少人数私募債」は、発行後も50名未満でなければならないので、譲渡制限を設けることで社債所有者の分散を防ぎます。

以上4つの条件を満たすことで、中小企業でも「少人数私募債」を発行することができます。

ベンチャーキャピタルから資金調達をするメリット・デメリット

社債はお得?それともリスク?

「少人数私募債」を発行するメリットはどのようなものでしょうか?

  • 金融機関等からの借入と違い、月々の返済がない
  • 担保や保証人が不要
  • 償還期間を決定できる
  • 利率を決定できる
  • 審査が不要
  • 経営意識が向上する
  • 社債購入者にとって魅力的な金融商品である
  • 金融機関からの評価がアップする可能性がある

など、いくつかのメリットがあります。

では、デメリットはないのでしょうか?

  • 一括で返済することが多いので、償還時の負担が大きい
  • 信用で発行しているので、結果を求められるプレッシャーある
  • 募集人数が限られるため、多額の資金調達がしにくい
  • 勧誘者を説得するための詳細な事業計画が必要である

などがデメリットとしてあげられます。

いずれにしても将来返済することには変わりありません。

償還期限までのしっかりとした事業計画と、その成果に責任をもてる経営をしていくことが社債という資金調達の責務なのです。

社債以外の資金調達方法

社債以外にも資金を調達する方法はあります。おさらいしておきましょう。

証書借入

証書借入とは、「金銭消費貸借契約書」という契約書を銀行に差し出して受ける借入で、長期の返済期間での借入で使われます。証書借入は主に設備投資をするときに利用する借入です。

手形借入

借入用の手形を銀行に差し入れて融資を受ける方法で、短期の返済期間での借入で使われます。
手形借入は賞与資金や納税資金などの短期の運転資金のためにする借入です。

手形割引

売上代金を手形で回収した場合、その手形を銀行が買い取ることによって資金が出される借入れ方法です。
手形も通常短期の運転資金のためにする借入です。

当座貸越

融資の極度額を設定し、その極度額までは自由に融資を受けたり返済したりできるという融資方法です。
これも短期の運転資金のためにする借入です。
特に当座貸越は、いつでも借入れをすることができ、いつでも返済することができる、とても便利な借入れ方法なので、是非利用したいものです。

上記4つの借入れのうち、手形割引はなるべく使わないようにしましょう。
最も簡単に借り入れができる方法なので、最後の資金調達の手段としてとっておきます。

企業の状況あるいは銀行の融資態度にもよりますが、借入の難しい順番は

  1. 当座貸越
  2. 証書借入
  3. 手形借入

の順番です。
難しい順番に借入れを実施するのが理想ですが、中小企業の場合はまず手形借入で実績を作って、設備投資などの時に証書借入をして、最後に当座貸越の枠を取るのが良いでしょう。

役員借入金

役員借入金は銀行借入と同じように企業にとっての収入です。
私はこの役員借入金の活用を積極的に勧めています。勧める理由は2つあります。

1つ目が役員借入金を利用して、損益の平準化ができるからです。
業績が良い時には、目一杯役員報酬をいただいて、その一部を会社に貸し付けるのです。
それにより業績の良い時には役員借入金が増えていきます。

一方、業績が悪くなったときには、役員報酬を減額、あるいはゼロにしてしまいます。
「そんなことしたら生活ができない」という声が聞こえてきそうです。
大丈夫、心配ありません。

貸し付けてあった役員借入金を順次返済してもらって生活をするのです。
つまり、業績の悪い時には役員借入金が減っていくのです。
こうすれば業績の良い時には役員報酬を高くして利益を圧縮し、業績が悪くなったら役員報酬を下げて赤字を圧縮することができます。

2つ目の理由ですが、金融機関が役員借入金を自己資本とみなしてくれるからです。

金融機関が会社の財務内容を判断するとても重要な基準として、自己資本比率があります。
自己資本比率は(純資産÷総資産)で計算しますが、高ければ高いほど良いとされます。
高くするためには分子の純資産を増やすか、分母の総資産を減らすしかありません。

本来、役員借入金は負債であって純資産ではありませんが、多くの場合、金融機関は役員借入金を純資産としてみなすようです。
したがって役員借入金を増やしても自己資本比率は高くなります。

このように役員借入金を上手に活用して損益を平準化し、自己資本比率を上げる方法もあります。

資金繰りと減価償却費の関係について

中小企業の資金調達、まとめました。

今回は社債を中心にお話してきましたが、ここで中小企業の資金調達について再度まとめておきましょう。
何度も申し上げますが、資金調達の方法は3つしかありません。

1つ目が「借金」、2つ目が「資本金」、そして3つ目は「利益」です。

一番健全なのはもちろん「利益」です。
しかし利益を出すために必要な投資をするとき、あるいは利益が出ているが回収サイトが悪く、キャッシュが足りないとき等、どうしても借金による資金調達が必要な場合があります。

おススメは、利益が出ているときに余裕の資金を借りておくことです。
銀行等から借りる場合は、資金がショートしてからより、利益が出ているときの方が借りやすいからです。
銀行等の収入源の一つが貸し付けによる利息なので、中小企業を支援しながら貸したいのが本音です。

しかも利息を支払いながらきちんと返済してくれる会社に、です。
ですから利益が出ている時に、金融機関との関係性を作っていくためにも進んで資金調達をしておきましょう。

そうは言ってもやはり借金をするときは資金繰りが厳しいときですよね。
借金による借入の他、資金調達の調達先には以下のものがあります。

  1. 親、親戚、友人、知人
  2. 日本政策金融公庫
  3. メガバンク(大手銀行)
  4. 地方銀行
  5. 信用組合、信用金庫
  6. 助成金、補助金
  7. ベンチャーキャピタル
  8. 個人投資家
  9. ノンバンク(消費者金融・信販会社)

上記については、別コラムにて詳しく説明しております。
今回お伝えした「社債」は、①と⑧のような性格を持っていますね。

会社の規模にもよりますが、比較的借りやすいのは②と⑤です。
いずれにしても銀行が貸したいと思ってくれるような根拠、つまり経営計画が必要です。
経営計画により資金を調達し、その資金で利益を出し、手元のキャッシュを増やしていく。

どのように利益を出すのかも、経営計画が教えてくれる。
経営計画は、中小企業にとって最も重要な武器なのです。

借入金(ローン)と社債の違いについて

借入金(ローン)は言うまでもなく金融機関等の第三者から資金を調達することです。中小企業にとっては一般的な資金調達方法です。利息を支払いながら毎月少しずつ返済していくことが主流となります。担保や保証を求められることもありますが、中小企業向けには信用保証制度という公的な保証制度があります。

社債は利息を支払うことを条件に資金を調達するのは一緒ですが、借入より多額・長期間・期日一括返済可となることが特徴です。
複数の投資家へ資金提供を募るのが一般的で大企業ではメジャーな資金調達方法ですが、中小企業での利用は少ないです。中小企業でも可能なのは少人数私募債ですが、募集や契約などを原則として自社で行うため難易度が高いです。

そのため、中小企業の場合、金融機関が社債の引受を行うこともあります。

中小企業の場合は、借入金(ローン)で資金調達することが一般的ですが、信用力に自信がある企業は社債にチャレンジしてもいいでしょう。

社債を活用し新たなステージへチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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このコラムの著者 : 菱刈 満里子

大学卒業後、大手証券会社、文部科学省研究室秘書等を経験後SMC税理士法人に入社。 会計・税務業務に13年間携わった後、経営計画を中心とした未来経営に軸足を移す。 のべ150社以上の経営計画を作成、経営支援を行っている。

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