投稿日:2018年11月17日
更新日:2022年12月21日
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資産の減少により資金が増加するという資金繰り方法をご紹介します。
まずは棚卸資産、つまり在庫について見ていきましょう。
在庫を増やそうとすると、商品の購入のために資金が少なくなってしまいます。
逆に在庫が少なくなれば資金は増えますが、在庫が少なすぎることで、商品の在庫切れになって販売の機会を失うことにもなりかねません。
在庫が過大でもなく不足でもない、つまり適正在庫を持つことが理想ですが、その適正在庫をどのように算定するかが難しいものです。
在庫金額は経営者の考え方ひとつで大きく変わります。
売上至上主義の三流アホ経営者ほど在庫が増えます。資金より売上が重要なのです。
一方、資金を重視する経営者ほど在庫が少なる傾向にあります。
とは言っても、販売予測の狂いなどによって過剰在庫になることもあります。
その時に迅速に在庫削減の対策を打てる優秀な経営者と、何も手を打たない三流経営者がいます。
適正在庫は、販売の機会損失をしないようにしながら在庫削減をする限界値といえます。適正在庫については、在庫回転率などを使用して算定すると良いでしょう。
在庫を少なくすれば資金は潤沢になります。理想的には、受注をしてから仕入をしたり製造を開始したりすることができれば、極限まで在庫を減らすことができますね。
全く動きがない滞留在庫や販売できないような不良在庫を作らないことが一番重要ですが、それでも発生してしまったら、迅速に処分することです。
次が有形固定資産です。
有形固定資産には、建物・建物付属設備・構築物・機械装置・工具器具部品・車両運搬具などがあります。いずれも多額の資金を投入して購入したものばかりです。当然、有形固定資産が多ければ、購入に資金が必要になりますから資金は減っています。
それでも有形固定資産を購入する、つまり設備投資をするのは、投資した設備を活用して収益を生み出すためです。
例えば、建物に設備投資するのは、工場を建てて新製品を製造するとか、倉庫を建てて商品・製品を保管して出荷するとか、マンション・アパートを建てて賃貸するとかの、収益向上あるいはコスト削減に貢献するためです。
機械装置への投資も同様です。機械装置に設備投資することで新製品を作ったり、生産効率を向上させたり、製造方法を変更したりするなど、やはり収益向上かコスト削減に貢献する目的での投資です。
運送会社のトラックやタクシー会社のタクシー車両や営業マンの営業車両などの設備投資は、当然収益向上あるいはコスト削減に貢献します。
ところが経営者が乗る乗用車はどうでしょうか?
それが高級車両の場合、収益生むのでしょうか?
あるいはコストを削減できるのでしょうか?
高級車両は収益を生まないばかりか、かえってコストがかかります。
私は経営者の乗る車両は安くて丈夫な車両で良いと思っています。
事実、私は国産の中古車を10年以上乗っています。
三流アホ経営者ほど高級外車(ベンツ、BMW,アウディ、ボルボなど)や高級国産車(レクサスなど)に乗ります。
何故、高級車両に乗りたがるのでしょうか?
三流アホ経営者は経営者としての実力もなく、人間的にも中身のない人間が多いので、それをカバーするために何かで飾る必要があるからです。
それが高級車両に乗ったり、ブランド物を身に着けたり、持ったりすることなのです。
さらに悪いことに、自己資金もないにもかかわらず高級車両に乗りたがるため、借金をしたり、リースで借りたりする、おめでたいアホ経営者もいます。
アホ経営者は救いようがないですね。
決算書の読み方「貸借対照表」の簡単な見方気分を変えて、次は工具器具備品です。
工具器具備品には工具、事務用品(コピー機・プロジェクター・机・パソコン・金庫・椅子など)、応接セット、棚、キャビネット、テレビ、家具、LAN設備、サーバー機器などがあります。
特にパソコンについては、定期的に設備投資することによって業務の生産性が向上します。それによって人件費が削減できたり、新たな業務ができることで収益性が向上したりすることもあります。
以上のように、様々な設備投資の目的は、何らかの収益を上げることかコストを削減することにあります。
言い換えれば、収益を上げない設備投資、コストをカットできない設備投資はしないことです。
そして、収益を上げるつもりで設備投資をしたものでも、収益が上がらなくなってしまって遊休の状態にある資産がある場合には、早々に処分して資金化すべきです。
みなさんの会社には、収益を上げることができない建物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品がありませんか。
即刻資産を売却して、資金に替えましょう。
次はリゾート会員権です。
貸借対照表の「投資その他資産」の中によくあるものがリゾート会員権です。
リゾート会員権を福利厚生などで利用している場合を除き、利用しないで遊休状態にあるリゾート会員権は、すぐに処分して資金化すべきです。
私が見てきた多くのケースでは、三流アホ経営者は少し利益が出てきて会社の業績が良くなると、リゾート会員権を勧誘されて購入してしまいます。
会員権を購入して一端の経営者になったような気分になるのです。
最悪なのは借金をしてリゾート会員権を購入している場合です。
こんな行為は、意図して自社の財務内容を悪くする努力しているのと同じです。
購入したリゾート会員権を最初のうちは利用しますが、3年4年と経過していくうちに、そのリゾート地に飽きてしまって全く利用しなくなってしまう会社を私はよく見てきました。
三流アホ経営者の典型ですね。
活用していないリゾート会員権は、損をしてでも資金化しましょう。
リゾート会員権と同じような性格のものにゴルフ会員権があります。
バブル時代に、銀行の勧めで多くの会社が複数の会員権を購入したのではないでしょうか?
実は私もその一人なのです。
私は2つの会員権を約3千万円で購入しましたが、ゴルフを殆ど止めてしまったので、結局2つの会員権を約500万円で売却して大きな損をした経験があります。
この私の事例は、収益向上あるいはコスト削減に貢献しない投資をして大損した典型的な例ですね。
投資の様な支出、戦略的経費から経営を考えるそして投資有価証券があります。
投資有価証券は、取引関係にある会社に必要な出資を引き受けて、数社の株式も持っている場合があります。
以前は取引関係があったけれども、今はそうでもないような場合には、処分して資金を増やします。
長期貸付金も、可能な限り早期に回収して資金化します。
厄介なのが役員への貸付金です。
役員への貸付金がある会社は、役員が公私混同をしている場合が多いものです。
役員は自分の貯金を会社へつぎ込むぐらいのことをしても当たり前なのに、逆に役員報酬と別に会社の資金を個人的に使ってしまう、三流どころか失格ダメ経営者のすることです。
少し異質な資産があります。保険積立金です。
保険積立金は、役員や社員の退職金の資金準備のためと、万が一の死亡のために備えて積み立てている保険です。
私の考えとしては、現金預金が内部資金で、保険積立金は外部の保険会社に資金を預けている外部資金だと思っています。
つまり資金の内部留保と外部留保です。
そして、保険積立金によって課税の繰延もできます。
資金に余剰があれば、保険積立金は必要な保険分までは積極的に投資をしても良いものです。
資産はもともと調達した資金の運用です。
資金が手元にあれば現金預金の形態で残っています。
収益を向上するためやコストを削減するために、この現金預金をそれ以外の資産として運用します。
売上を上げるために掛けで販売すると、手元の資金を受取手形・売掛金で運用します。
販売する機会を失わないために適正な在庫を保有すると、手元の資金を棚卸資産として運用することになります。
企業というものは何らかの収益を上げるかコストを削減するために、手元資金を設備に投資して運用します。
したがって、その目的のために活用できない資産の運用はできるだけ早く辞め、資産を売却して現金預金の手元資金として保有すべきです。
私の30年以上の公認会計士としての経験上、本当に多くの会社が不要な資産を持って無駄な運用をしています。
早急に不要な、あるいは遊休の資産は処分して資金化しましょうね。
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このコラムの著者 : 曽根 康正
SMCグループ顧問、1959年(昭和34年6月8日)に岐阜県多治見市で生まれる。 「社外重役の立場から専門能力を発揮し中小企業を支援する」 というグループ経営目標のもと、東海エリアにおいてNo.1の会計事務所を目指す。