投稿日:2019年06月30日
更新日:2021年05月01日
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前回のコラムでは建設業と資金繰りの関係をお伝えしてしましたが、同様に製造業の資金繰りも大変です。
なぜなら製品を作るための材料だけでなく、設備投資が必要だからです。
今回は製造業と資金ショートについてみていきましょう。
皆さんは工場見学に行かれたことはありますか?美味しいお菓子やお酒を作る工程に多くの設備があったことだと思います。
さらにはその設備を入れる建物や、設備の修繕や改造も必要になってきます。
日本はモノ作りで成長してきましたので、中小企業といえど機械設備には大枚をはたいて挑戦してきたことでしょう。この資金はどのように集めてきたのでしょうか。
初めから設備投資をできる資金はなかったでしょうから、資金を協力してくれたのは銀行だと思います。
銀行はいくら貸してくれるでしょう。そして何年かかって返済したらよいでしょう。
設備投資の借入をするときには、耐用年数が重要になってきます。
この耐用年数より長い期間で借りることが、資金繰りに大きく関係してきます。
8年の耐用年数の機械装置であれば8年以上の返済期間、20年の耐用年数の建物であれば20年以上の返済期間にするようにします。
「耐用年数」とは設備投資金額を配分して経費化する期間を言います。
設備投資の耐用年数と借入返済の関係を具体的に見ていきましょう。
機械装置20,000千円(耐用年数10年:簡略化のために減価償却費は毎期2,000千円とします)を銀行借入で購入するとします。そして当期利益が0円と仮定しましょう。
A案 返済期間5年 返済期間 < 耐用年数
1年間の返済金額4,000千円 > 当期利益0円 + 減価償却費2,000千円
B案 返済期間10年 返済期間 = 耐用年数
1年間の返済金額2,000千円 = 当期利益0円 + 減価償却費2,000千円
C案 返済期間15年 返済期間 > 耐用年数
1年間の返済金額1,333千円 < 当期利益0円 + 減価償却費2,000千円
「当期利益+減価償却費」が返済財源です。つまり利益が0円でも2,000千円を返済できます。
ところが返済期間を5年としているA案では、1年目から2,000千円の資金がショートします。
10年返済のB案はどうでしょう?なんとか返済はできますが、会社にキャッシュは残りません。
C案であれば、667千円のキャッシュが残ります。耐用年数より長い返済期間で借りたからですね。
そして「1年間の返済金額以上の利益を出す」経営計画が必要です。
この設備投資をしたことで、どれだけの製品が生産できるのでしょう。
或いは人員を削減できるのでしょうか。もちろん最初からうまくいくことはないでしょうが、利益を出すことを目的にアクションプランを立てなければ、機械装置を活かせません。
製造業の場合、売上が多くても少なくても工場にかかる経費は変わりません。
工場の地代、光熱費、減価償却費、修繕費など、売上が0円でも費用は発生します。
したがって売上が少ないとこれらの費用が負担となり利益を圧迫します。工場で働く人の労務費、労働分配率も高くなってしまいます。
一方、売上が多くなった途端に一気に利益が出ます。そうですよね、売上が増えても工場の固定費は変わりませんから。
製造業はモノ作りのプロです。資金ショートしないためには、新しい製品の開発と生産がかかせません。
機械から出てくる製品の数には限界がありますから、付加価値の高い製品の開発が一番のカギとなるでしょう。
日本の製造業、これからも応援していきます!
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このコラムの著者 : 菱刈 満里子
大学卒業後、大手証券会社、文部科学省研究室秘書等を経験後SMC税理士法人に入社。 会計・税務業務に13年間携わった後、経営計画を中心とした未来経営に軸足を移す。 のべ150社以上の経営計画を作成、経営支援を行っている。