投稿日:2019年06月30日
更新日:2022年12月21日
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今回は、飲食業の経営計画についてお話しします。
飲食業を経営する場合、「食材費は売上の30%、人件費は売上の30%を目安にする。」
というフレーズを一度は聞いたことがあると思います。
これは飲食業の重要な指標で、「FLコスト」と呼ばれるものです。
「F」とは「Food」、つまり食材費のこと。そして「L」は「Labor」で、人件費を指します。
飲食業において利益を出すためには、この「食材費」と「人件費」を売上の60%以内に抑えなければいけないと言われており、その目安として「食材費率=30%」「人件費率=30%」という数字があります。
「FLコスト」に対して、経営計画の作成で基準となる重要な指標は、「限界利益率」(※2)と「給与分配率」(※4)です。
(※1) 限界利益=売上高-変動費(※3)
(※2) 限界利益率=限界利益÷売上高×100
(※3) 変動費=食材費
(※4) 給与分配率=人件費(※5)÷限界利益×100
(※5) 人件費=給料・賞与(法定福利費・福利厚生費は含まない)
それでは、「FLコスト」を「限界利益率」と「給与分配率」に置き換えてみましょう。
売上が100の時、FLコストは、食材費 30 人件費 30 を目標としますので、限界利益は、
売上100-食材費30=限界利益70
となります。(限界利益率は70%)
給与分配率はどうでしょうか。
人件費30÷限界利益70×100=42.8%
給与分配率は、どんな業種であっても40%~50%の間になるようコントロールすると利益も出て、従業員に十分な給料を支払うことがでます。
飲食業においては、原価を30%に抑えることができれば、給与分配率はズバリ42.8%を目標とすると良いでしょう。
それでは上記をまとめてみます。
FLコスト= 「売上に対する食材費率=30%」「売上に対する人件費率=30%」
経営計画を作成する上での指標=限界利益率 70% 給与分配率 42.8%
このように言い換えることができます。
飲食業を経営する方とお話しする際、人件費は30%に抑えているという会話を良く聞きます。
FLコストで言う「人件費率」と「給与分配率」はまったく別の比率ですので、注意が必要です。
経営計画を作成するうえで、「限界利益率」と「給与分配率」はもっとも重要な比率です。
FLコストの違いを十分に理解して経営計画を作成して頂ければと思います。
それでは、立てた経営計画を達成するにはどうすればよいでしょう。
答えは、計画と実績を比較することにより、ズレに気づき修正行動をとり続けること。
これが経営計画を達成する唯一の方法なのです。
しかし、修正行動をとり続けることは難しく、挫折してしまうことが多くあります。こんな時、仲間や専門家によるチェックの仕組みを取り入れると、飛躍的に継続が可能になります。
このPDCAを毎月回し続ける仕組みが、挫折しない目標達成の唯一の方法となるのです。
飲食業における経営計画のポイントをお話ししていきましょう。
ポイント:食材費率30% (食材費率 = 食材費 ÷ 売上高 × 100)
食材費は、売上に対して30%を目標にします。
直近の決算書を分析し、食材費率が30%以上であれば、早期に改善が必要です。
5ヵ年計画の3年目には30%を達成できるよう計画してみましょう。
30%を達成するための具体的アクションプランとして最初に手を付ける箇所は、ズバリ「ロスの管理」です。
飲食店でよくあるケースでは、
思い当たることはありませんか。
食材費率30%に徹底的にこだわり改善することにより、必ず経営状態は良くなります。
もちろん、良い食材を安価に提供することをウリにする場合は、食材費率は30%以上になるかもしれません。しかしこの場合は、食材費率を30%に抑えられる管理体制はあるが、意図して食材費に30%以上使い、人件費を抑えるなどの管理をしている場合です。或いは薄利多売で集客ができる、大手飲食チェーン店も30%以上の食材比率が可能ですが、中小企業では難しいことです。
まずは30%にこだわった計画を立てましょう。
ポイント:給与分配率42.8% (給与分配率 = 給与・賞与 ÷(売上-食材費)×100)
人件費は給与分配率でコントロールします。目標数値は42.8%です。
直近の決算書を分析し、給与分配率が42.8%以上であれば改善が必要です。
人件費のコントロールは食材費比率より難しいと思いますが、5ヵ年計画の3年目には42.8%を達成できるよう計画してみましょう。
42.8%を達成するための具体的アクションプランとして最初に手を付ける箇所は、ズバリ「勤務体制と残業の管理」です。
飲食業はパートやバイトを雇用することが多く、一度シフトを組むと、仕事がなくても清掃や片づけ等をすることで時間を使ってしまうこともあります。
また、仕事の効率化を考えず仕事をして、時間が足りなくなり残業する。
効率化すれば今の人数で十分に仕事が回るにも関わらず、忙しそうだという理由で人を採用する。
これらは良くあるケースです。
人件費率42.8%に徹底的にこだわり改善することにより、必ず経営状態は良くなります。
売上は
「1日売上 = 席数 × 回転数 × 客単価」
で決まります。
売上をアップするには、回転数をあげるか客単価を上げるしかありません。
大幅な拡大を目指すのであれば、新店舗の開店を経営計画に盛り込むのも良いでしょう。
また飲食業の場合は、開業に必要な店舗の改装費用等で、銀行借入をすることが多いと思います。
銀行からの借入金のうち「一年以内返済長期借入金」には注目しておいて下さい。
「一年以内返済長期借入金」は、一年間で支払う銀行借入の元金合計です。
この金額は、税金を支払った後の当期利益でしか返済できません。当期利益が5,000千円なのに、返済する金額が6,000千円(月額500千円)であれば、当然キャッシュは増えません。
つまり「一年以内返済長期借入金」の金額が、最低の利益目標となるのです。
1~4を意識して、5ヵ年の経営計画を策定してみて下さい。
きっとワクワクする計画になると思いますよ。
SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 経営改善 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
このコラムの著者 : 浅田 和利
30年間の会計事務所経験から、経営者が抱える多くの悩みをお聞きし、その悩みを数字で解決してきました。 今まで数字を見てこなかった方、数字は苦手と感じている方にも、分かりやすく噛み砕いた説明で疑問点が無くなるまで解説します。