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企業の節税対策13選!お金を残して会社を強くする方法と注意点を徹底解説

投稿日:2024年10月18日

更新日:2024年10月21日

経営者が知っておくべき「利益とキャッシュの最大化」セミナー

この記事を読むのに必要な時間は約 13 分です。

適切な節税対策は、安定した企業経営のために大変重要です。

無計画な節税は短期的に税金を減らせるかもしれませんが、長期的には企業の成長を阻害し、最悪の場合、事業の継続さえも脅かす可能性があります。

そのため、企業の現在の財務状況と将来の成長計画を十分に考慮することが不可欠です。

本記事では、特に効果的な「13の節税対策」と「3つの注意点」について詳しく解説します。会社にお金を残し、盤石な経営を目指す事業者にとっては必見の内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

会社にお金を残す「13」の節税方法

節税方法は、主に2つあります。税金を直接減らす「税額控除」と、利益を圧縮する「経費の増加」です。

税額控除と経費の増加の違い

「税額控除」は手元資金への影響が少なく「経費の増加」は支出を伴いますが、適切に活用すれば、事業の成長や従業員の満足度向上など、プラスの効果が期待できます。

経営者は財務状況や成長戦略を踏まえ、これらをバランスよく活用し、短期的な税負担軽減と中長期的な企業の成長を目指す戦略を立てましょう。

ここからは、具体的な節税方法を紹介します。

【1】事業に必要な物を購入して経費を増やす

事業に必要な物を購入すると、利益を減らして税負担を軽減できます。

具体的には、オフィス用品や業務用機器、ソフトウェアの導入、広告費、従業員の教育費などです。これらの支出は法人税の軽減だけでなく、業務効率や生産性の向上にもつながるでしょう。

さらに、消費税の節税効果も期待できます。

基本的に、納める消費税は、「預かった消費税」から「支払った消費税」を差し引いた金額です。事業に必要な物を購入するほど「支払った消費税」が増えるため、納める消費税が少なくなります。

納付する消費税の計算方法

ただし、事業内容と預かった消費税額で納付税額が決まる「簡易課税制度」を選択している場合、消費税の節税効果は期待できません。

さらに、この節税策を取り入れる際は、次の点に気をつける必要があります。

まず、購入する物は事業に必要なものに限定し、不必要な支出は避けるべきです。無駄な支出は、税務調査のリスクを高めるだけでなく、資金繰りにも悪影響を与えます。

また、10万円以上の資産は、原則として、一括で当期の経費として落とすことはできず、減価償却資産として耐用年数にわたって経費にしなければなりません。

【2】30万円未満の資産を経費として処理する

原則、10万円以上の資産は複数年にわたって費用にしますが、30万円未満の資産は、取得価額に応じて早期に経費にすることが可能です。

取得価額 10万円未満 10万円以上
20万円未満
30万円未満
償却方法 全額を損金算入 3年間で均等償却 取得した年度に全額損金算入
適用条件 すべての企業 青色申告をしている中小企業者等
上限額 上限なし 1事業年度300万円まで
償却資産税※ 課税対象外 課税対象

償却資産税とは、事業に使用される構築物、機械、器具、備品などの減価償却資産に対してかかる税金です。

以下、取得価額ごとに解説します。

10万円未満の資産

取得価額が10万円未満の資産は、購入した年度に全額を経費に計上できます。償却資産税の課税対象にもなりません。

10万円以上20万円未満の資産(一括償却資産)

取得価額が10万円以上20万円未満の資産は、3年間で均等に経費化できます。

すべての企業が利用可能で、特別な条件も、事業年度ごとの上限額もありません。また、償却資産税もかかりません

30万円未満の資産(少額減価償却資産の特例)

従業員数500人以下の青色申告をおこなう中小法人等が、30万円未満の資産を取得した場合、取得した年度に全額を経費にできます。

ただし、取得価額の合計額は1事業年度あたり300万円が上限です。また、償却資産税の課税対象となるため注意しましょう。

「10万円以上20万円未満の資産」は償却資産税がかからないため、3年間で均等償却をした方が、結果として節税効果を期待できます。

これらの方法は、適用条件や上限額などがあるため、自社の状況に応じて適切に選択しましょう。

【3】買掛金や未払金を漏れなく計上する

買掛金や未払金を漏れなく計上すると、事業年度内の費用を正確に反映できます。

確認すべき経費は、以下のとおりです。

  • 遅れて到着した仕入れや外注費の請求書
  • 翌月に引き落とされる水道光熱費や通信費
  • 締め日以降の給与や残業代
  • 未払いの社会保険料や労働保険料 など

この節税対策には、請求書や契約書の適切な管理が必要です。実際の取引に基づいた正確な記録を心がけましょう。

【4】接待交際費をルールに従って計上する

接待交際費には、企業規模に応じた上限があります。たとえば、資本金1億円以下の中小企業では、年間800万円か、接待飲食費の50%までが損金算入できます。

上限があるため、勘定科目の使い分けが重要です。

勘定科目 内容
接待交際費 取引先との飲食代や贈答品代など
会議費 社内会議や取引先との打ち合わせ費用など
福利厚生費 従業員の慰安旅行や慶弔金、健康診断費用など
広告宣伝費 見本品や試用品、景品など

また、「1人当たり1万円以下の飲食費」は接待交際費に該当せず、全額経費として計上できます。領収書は日付、金額、参加者などを記録して保管しましょう。

なお、飲食費の詳細は「飲食費は全額経費にできる!?損金算入ルールを基本から徹底解説」でわかりやすく説明していますので、あわせてご覧ください。

【5】不要な在庫を処分して経費にする

売れ残りや不要な在庫は、適切に処分することで経費を計上し、節税が可能です。処分方法には、廃棄、セール販売、買取業者へ売却などがあり、会計処理が異なります。

たとえば、原価100円の商品を処分する場合の会計処理は、以下のとおりです。

処分方法 会計処理
廃棄 商品原価を「廃棄損」に計上
セール販売 通常の販売と同様の会計処理
(売価と原価の差額が利益または損失)
買取業者への売却
処分方法 会計処理 仕訳例
貸方 借方
廃棄 原価100円の商品を廃棄 廃棄損100 商品100
セール販売 110円でセール販売 現金110
売上原価100
売上高110
商品100
買取業者への売却 70円で買取業者に売却 現金70
売上原価100
売上高70
商品100

ただし、処分時には以下の点に、注意が必要です。

  • 証憑(しょうひょう)書類の保管:処分の理由や経緯を記録し、廃棄証明書などを保管しましょう。
  • 処分の妥当性:節税目的とみなされないよう、合理的な判断で処分が必要です。
  • 決算期の考慮:当期の経費にするため、決算期末までに処分します。
  • 在庫評価方法の一貫性:先入先出法や総平均法など、選択した評価方法に基づいて、適切な原価計算が必要です。

不要な在庫を処分し正確に会計処理をおこなうと節税効果を得られますが、過度な処分は避け、適切な在庫管理を心がけましょう。

【6】支払いを年払いにする

1年以内に提供されるサービス料を前払いした場合、支払時に全額を経費計上できます。支払ったタイミングでまとめて経費にできるため、決算期末近くに月払いから年払いに変更することで、節税が可能です。

支払いを年払いに変更する

具体的には、保険料、地代、家賃、リース料などの前払いを検討しましょう。

ただし、1度適用するとその後も継続が必要です。また、支払時から1年を超える費用には、適用できません。

【7】役員報酬を最適な額に設定する

役員報酬を高く設定すると法人税は軽減されますが、役員個人の所得税・住民税・社会保険料は増加します。

このため、トータルで最適な金額を検討しなければいけません。

たとえば、法人の利益1,000万円から役員報酬を支給する場合、年間で500万円よりも100万円に設定した方が、合計での手取り額は約19万円多くなります。

年間の役員報酬の額 役員報酬100万円 役員報酬500万円
個人 所得税 0円 13万5,500円
住民税 0円 23万8,000円
社会保険料 15万円 75万円
手取り額 85万円 387万6,500円
法人 利益 900万円 500万円
社会保険料 15万円 75万円
法人税等 265万5,000円 127万5,000円
手取り額 619万5,000円 297万5,000円
合計 704万5,000円 685万1,500円

個人の税金は、社会保険料と基礎控除のみ考慮
法人税率は、簡易的に30%で試算

なお、報酬額は会社の利益や役員の家族状況などによって異なります。また、役員自身の生活費を考慮する必要もあるでしょう。生活費と会社の財務状況を踏まえ、最適なバランスを検討することが大切です。

【8】経営者の車を会社名義にする

経営者の車両を会社名義に変更すると、車両関連費を会社の経費として計上できます。主な方法は、新車購入、個人所有車の会社への売却、リース契約の利用などがあります。

会社名義にすることで、以下の経費が計上可能です。

  • 車両購入費:耐用年数に応じて経費化
  • 購入時の諸費用:自賠責保険料、登録費用、重量税など
  • 維持費:ガソリン代、自動車税、自動車保険料、車検・修理費用、駐車場代など

また、車両購入時に支払った消費税は、会社の課税売上の消費税から控除できるため、消費税の節税効果が期待できます。

ただし、個人的に車両を使用する場合は、給与とみなされるリスクがあるため、適切な管理が必要です。

【9】役員や従業員の自宅を社宅扱いにする

会社が賃貸物件を借り上げて社宅として提供すると、家賃を経費にできます。

ただし、基本的に役員や従業員から以下の金額の賃料を徴収しなければ、給与扱いとなり所得税や住民税、社会保険料が発生します。

  • 役員:賃貸料相当額
  • 従業員:賃貸料相当額の50%以上

賃貸料相当額とは、次の3つの合計額です。

  1. 「その年度の建物の固定資産税の課税標準額」× 0.2%
  2. 12円 ×「その建物の総床面積(㎡)/3.3(㎡)」
  3. 「その年度の敷地の固定資産税の課税標準額」× 0.22%

なお、役員の場合は床面積や自己所有の物件か賃貸物件かによって賃料相当額の計算方法が異なります。賃料を設定する際は、物件ごとに詳細な試算が必要です。詳しくは、国税庁ホームページをご確認ください。

社宅の利用が給与扱いにならない場合は、税金や社会保険料がかからず、住宅手当を支給するより有利です。

また、会社が受け取る賃料は会社の利益となりますが、支払った賃料との差額分の経費が増加します。

役員や従業員の自宅を社宅扱いにする

【10】出張旅費の規定を整える

出張旅費規程を適切に作成すれば、交通費や宿泊費の実費に加え、日当の支給が可能です。日当は法人税の経費となり、消費税の仕入税額控除の対象にもなります。

また、受け取った日当には所得税や住民税、社会保険料がかからないため、従業員の節税にもつながります。

ただし、役職に応じて金額差を設けることは可能ですが、社会通念上適正な金額で、かつ全社員を対象とした規程が必要です。

【11】従業員の給与を適切に引き上げる

決算賞与の支給や昇給など給与を適切に引き上げると、法人税を減らしながら、従業員のモチベーションも高められます。

さらに、「賃上げ促進税制」を活用すれば、給与の増加分に応じた法人税の控除が可能です。

税額控除額は、事業年度や企業規模等によって異なりますが、令和6年4月1日から令和9年3月31日までに開始する事業年度の場合、青色申告をおこなう中小企業の控除率は、以下のとおりです。

  • 給与等支給額が前年度比1.5%以上増加:増加額の15%
  • 給与等支給額が前年度比2.5%以上増加:増加額の30%

また、教育訓練費の増加やくるみん認定の取得等により、控除率が上乗せされます。

たとえば、前年度の給与総額1,500万円、今年度の給与総額1,600万円の場合、教育訓練費やくるみん認定等がなくても、法人税を最大30万円節税できます。

増加額 100万円 1,600万円 - 1,500万円
増加率 約6.66% 100万円 ÷ 1,500万円
控除率 30% 約6.66% > 2.5%
税額控除額 30万円 100万円 × 30%

ただし、無計画な給与の引き上げは企業の資金繰りに影響するため、適切な設計が必要です。

【12】中小企業倒産防止共済に加入する

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、中小企業の連鎖倒産を防止するための共済制度で、掛金全額が経費になります。

掛金は月額5,000円から20万円まで設定可能で、合計800万円まで支払えます。

たとえば、年間240万円(20万円 × 12月分)の掛金を支払った場合、法人税率が簡易的に30%だとすると、最大72万円の節税が可能です。

中小企業倒産防止共済の加入での節税見込み

また、加入すると掛金総額の10倍、最大8,000万円まで無担保・無保証で借入れができ、取引先の倒産リスクにも備えられます。

解約は任意で、12ヶ月以上の納付で解約手当金が支給されます。ただし、加入から40ヶ月未満での解約は元本割れのリスクがあるため注意が必要です。

また、令和6年10月1日以降に解約後再加入する場合は、解約日から2年間は掛金を経費にできないことに留意しましょう。

このように、倒産防止共済は、節税効果を得ながら将来の資金ニーズに備える手段として、中小企業にとって有用です。

【13】事業に必要な設備に投資する

製造機械や設備、建物、車両、ソフトウェアなど、事業に必要な設備に投資することで、生産性の向上だけでなく、節税効果も期待できます。

通常、設備投資の費用は数年にわたり減価償却しますが、「中小企業投資促進税制」「中小企業経営強化税制」を活用すると、投資した年に大きな節税効果が得られます。

受けられる優遇措置は、以下のとおりです。

特別償却 税額控除
中小企業投資促進税制 取得価額の30% 取得価額の7%
資本金3,000万円超の法人は対象外
中小企業経営強化税制 取得価額の100%
(即時償却)
取得価額の10%
資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%

たとえば、160万円の機械装置を取得し中小企業経営強化税制を利用した場合、以下の節税効果が期待できます。

機械装置を取得し中小企業経営強化税制を利用した場合の節税効果

初年度に大幅な節税効果をもたらす制度ですが、税制措置には適用対象や設備の種類、取得時期など、詳細な適用条件があります。

特に、中小企業経営強化税制には、事前に「経営力向上計画の認定」が必要です。設備投資をおこなう前にこれらの条件をしっかりと確認することが欠かせません。

また、特別償却は減価償却費の前倒しに過ぎないため、長期的には節税効果が限定的です。

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企業の節税「3つ」の注意点

節税対策は、以下の3つに注意しましょう。

【1】無計画な節税は資金繰りに悪影響を与える

節税対策には、資金流出を伴うものと伴わないものがあります。経費増加や設備投資などの資金流出を伴う対策は、利益や税金を減らす一方で手元資金も減少させます。

たとえば、100万円の利益に対して70万円の経費を使った場合、21万円の節税が可能ですが、手元資金は49万円減ります。

利益 税金 手元資金
節税対策前 100万円 30万円 70万円(利益100万円 – 税金30万円)
節税対策後 30万円 9万円 21万円(利益30万円 – 税金9万円)
差額 70万円 21万円 49万円(節税で手元資金が減少)

法人税率、簡易的に30%で試算

さらに、過度な節税で赤字になると、融資が難しくなる可能性もあります。このため、節税対策は無駄な支出を避け、資金繰りに配慮した選択が重要です。

無計画に経費を増やした場合のデメリット

【2】将来的に税負担が増える可能性も考慮する

一部の節税対策は、税金の支払いを先送りするだけで、将来の税負担が増える可能性があります。中小企業倒産防止共済や生命保険の加入などがその例です。

たとえば、共済の掛金は全額損金算入できますが、解約時には解約手当金が収入となり課税されます。つまり、短期的な節税効果は得られるものの、長期的には税負担が発生するのです。

短期的な節税と将来的な税負担の仕組み

ただし、共済の加入はリスク管理として有効であり、経営が黒字の際に掛金を支払い、赤字時に解約することで税負担の最適化が可能です。

節税対策をおこなう際には、短期的な効果だけでなく、将来的な影響も慎重に検討しましょう。

【3】脱税にならないようにする

過度な節税対策や不適切な経理処理は、脱税と判断されるリスクがあります。たとえば、架空の役員設置や虚偽の廃棄損は、脱税とみなされる可能性があるでしょう。

脱税と認定された場合、追加の税金だけでなく、延滞税や加算税などのペナルティが課され、過去にさかのぼった税務調査がおこなわれる可能性もあります。

節税対策を進める際は、税理士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けながら進めることが重要です。

まとめ

適切な節税は、企業の長期的な成長に不可欠です。

本記事では、経費の増加や役員報酬の最適化、従業員への福利厚生など、13の効果的な節税対策について解説しました。

13の効果的な節税対策一覧

無計画な節税は、資金繰りに悪影響を及ぼすことがあります。また、将来的な税負担の増加や、過度な節税によるリスクにも注意が必要です。

これらの方法を活用することで、企業は税負担を軽減しつつ、事業の発展や従業員の満足度向上を図ることができます。

ただし、節税対策を実施する際は、資金繰りへの影響や将来的な税負担の可能性、過度な節税によるリスクに十分注意しましょう。

無計画な節税は企業の財務状況を悪化させる可能性があるため、税理士など専門家のアドバイスを受けながら、自社の状況に合わせた適切な戦略を立てることが重要です。

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このコラムの著者 : 長縄 龍哉

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