投稿日:2022年03月02日
更新日:2023年07月11日
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所得税や法人税の確定申告を適正に申告していなかった場合や、源泉徴収義務者が徴収義務を怠っていた場合には一定のペナルティが科されます。ペナルティは内容に応じて加算税・延滞税・利子税などの種類があります。
2022年の税制改正大綱では、このペナルティが一段と強化され、適正な記帳と申告を行っていない納税者に対して厳しい対応を行う内容になっています。ここでは「厳格化される税務調査のペナルティ」について紹介します。
目次
2022年の税制改正大綱では2つの規制が見直されます。
1つ目は「証拠書類のない簿外経費の必要経費不算入・損金不算入措置」です。これは、いわゆる 税務調査での「後だし経費」を規制する措置です。
2つ目は「帳簿の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置」になり、 売上や収入に関する帳簿の記載についての規制です。この2つの措置について詳しく見ていきましょう。
近年の税務調査では、調査により増加した所得(利益)を少しでも圧縮しようとして、帳簿に記載されていない経費を持ち出して税務署に経費として認めてもらおうとする「後だし経費」が行われることも少なくありませんでした。
「後だし経費」を行うことで、税務調査ではその経費が真実かどうかを検討しなければならず、調査に係る執行コストが増大します。また「後だし経費」は悪質な納税者が利用する手段になっている側面があり、今回「後だし経費」を規制する措置が実施される予定です。
具体的には「後だし経費」が帳簿書類等から明らかではなく、税務署が行う反面調査などでも取引が認められない場合は「後だし経費」は損金不算入となり、経費にならない措置となります。適用時期は、所得税については2023年以降分より、法人税については2023年1月1日以後に開始する事業年度より適用されます。
次に該当する場合の経費(売上原価や費用を含む)については今回の措置の対象にならず、必要経費算入・損金算入が認められます。
(令和4年度税制改正大綱P29、30より出典)
① 次に掲げるものによりその売上原価の額又は費用の額の基因となる取引が行われたこと及びこれらの額が明らかである場合(災害その他やむを得ない事情により、その取引に係る(イ)に掲げる帳簿書類の保存をすることができなかったことをその者において証明した場合を含む)
(イ) その者が所得税法の規定により保存する帳簿書類
(ロ) (イ)に掲げるもののほか、その者がその住所地その他の一定の場所に保存する帳簿書類その他の物件
② ①の(イ)又は(口)に掲げるものにより、その売上原価の額又は費用の額の基因となる取引の相手方が明らかである場合その他当該取引が行われたことが明らかであり、又は推測される場合であって、その相手方に対する調査その他の方法により税務署長が、その取引が行われ、これらの額が生じたと認める場合
「帳簿の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置」とは、納税者が「一定の帳簿」に記載すべき事項に関し、所得税・法人税・消費税について税務署から税務調査が行われ、調査官より帳簿の提出を求められたにもかかわらず納税者が応じなかったり、売上や収入についての帳簿の記載が十分でなかったりした場合に、通常の過少申告加算税の額または無申告加算税の額に加重措置を行う措置です。
加重される金額は、申告漏れなどに係る所得税・法人税・消費税の金額の5%です。帳簿の提示や帳簿の記載が著しく不十分だと認められる場合には10%が加重されます。適用開始時期は2024年1月以降に法定申告期限が到来する申告から適用される予定です。
措置の対象になる「一定の帳簿」とは、売上や収入について記載されているもので税務調査に必要と判断されたものを言います。
(令和4年度税制改正大綱P71より出典)
① 所得税又は法人税の青色申告者が保存しなければならないこととされる仕訳帳及び総勘定元帳
② 所得税又は法人税において上記①の青色申告者以外の者が保存しなければならないこととされる帳簿
③ 消費税の事業者が保存しなければならないこととされる帳簿
売上や収入についての帳簿の記載が十分でない場合は加重5%または10%のペナルティが課されます。この判断は次のとおりに行われます。
・加重5%のペナルティ「帳簿の記載が不十分である場合」
⇒売上や収入のうち、1/3以上が記載されていない場合
・加重10%のペナルティ「帳簿の記載が著しく不十分である場合」
⇒売上や収入のうち、1/2以上が記載されていない場合
2022年税制改正大綱では、経費に計上した関連書類の保管と売上や収入についての帳簿への記載が厳格化されることになります。これらの措置は、申告をしておらず、帳票の保管をしていない納税者へこれまでよりも大きなペナルティを課すものになっています。当事務所では、帳票の保管や帳簿への記載についてのご相談を承っております。お気軽にご相談ください。
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このコラムの著者 : 舩田 卓
1972年愛媛県生まれのA型。 愛媛県立松山商業高校卒業後、東京IT会計専門学校に進学。 在学中に税理士試験を全国最年少20歳で合格。 そのまま専門学校の専任講師となり、税理士試験の受験指導を担当。 22年間務めた講師の道から飛び出しSMC税理士法人に入社。