投稿日:2021年09月28日
更新日:2023年05月25日
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日本の所得税法では、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について確定申告することになります。
確定申告には「申告期限」があるのですが、何らかの事情で申告をしないまま期限を過ぎてしまったらどうなるのでしょうか。
本記事では、確定申告の期限を過ぎた時の対処法とペナルティを解説します。
目次
確定申告の期限が過ぎた場合について、国税庁のサイトには「期限内に確定申告を忘れた場合でも、自分で気が付いたらできるだけ早く申告するようにしてください。」とあります。
つまり期限が過ぎても申告できるわけですが、これは「期限後申告」といわれるものです。
まずは申告期限や、それを過ぎてしまった場合のことについて確認しましょう。
所得税の確定申告の期限は、原則として毎年3月15日です。税務署が申告書を受け付ける期間は、申告すべき課税期間の翌年2月16日から3月15日までで、2月16日や3月15日が土・日、祝日に重なる場合は、翌平日が期日となります。
ただ還付申告の場合は、1月1日から2月15日の間でも申告書を提出することができます。
確定申告を忘れて期限を過ぎてしまった場合でも、可能な限りすみやかに申告を行わなければなりません。
この場合は、期限後申告という扱いになりますが、申告をしないままにしていると「無申告」となってしまい、悪質な脱税行為と認定される恐れがあります。
なお確定申告は、過去5年分まで申告できますが、自分で気が付いて自主的に申告するケースと、税務署の指摘により申告するケースでは取扱いが異なります。
申告期限を過ぎてしまった場合、今後の金銭的ダメージ軽減のためには、一刻も早い申告が必要です。
また申告期限内に提出できなかったのが、災害その他やむを得ない理由だった場合は、「災害による申告、納付等の期限延長申請」の手続きをしましょう。
期限後申告を急ぐ理由は、無申告扱いによるペナルティを避けることと、青色申告の取り消しなどを避けるためです。
期限内に申告ができなかった場合、ペナルティを課せられることになります。また同時に、期限内に提出していれば適用されていたはずの、税制法上の優遇を受けられなくなるといったデメリットがあります。
これらの内容について、詳しく確認していきましょう。
無申告加算税は、期限内に確定申告を行わなかった場合に発生するペナルティです。無申告加算税は、納付すべき税額に対して課されるのですが、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の税率で課されます。
ただ税務署の指摘を受ける前の自主的な期限後申告だった場合、無申告加算税の税率は5%に軽減されます。
また以下の要件をすべて満たす場合は、無申告加算税が免除されます。
無申告加算税は、かなり大きな負担になるので無申告加算税の免除要件や、軽減要件をクリアできることが重要です。
無申告加算税は、期限内に確定申告をしなかったことに対するペナルティですが、延滞税は税額を納付期限内に払わなかったことに対するペナルティです。
つまり確定申告を期限内にしたとしても、納付期限内に納税しなければ延滞税が課されます。
納付期限の翌日から完納する日までの日数に応じて延滞税が発生し、最高税率は14.6%です。
納付期限から2ヶ月以内は、年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」の いずれか低い割合となるので、早めに納付することがダメージ軽減になります。
確定申告の期限内に申告しなかった場合、無申告加算税や延滞税のようなペナルティだけではなく、税制上の優遇措置も受けられなくなります。
ケースによっては、加算税などより影響が大きいので、これらのリスクも把握しておきましょう。
個人事業者が青色申告することで受けられるメリットの一つが、最大65万円まで事業所得から控除することができる「青色申告特別控除」です。
しかし65万円(もしくは55万円)の特別控除を受けるための要件の一つは、「その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに当該申告書を提出する」となっています。
つまり期限後申告の場合は、65万円(もしくは55万円)の特別控除を受けられず、青色申告特別控除の額は10万円となります。
不動産や事業等から生ずる所得から最大65万円が控除されたり、家族の給与を経費扱いにできたりといったメリットがある青色申告制度です。
この青色申告ですが、青色申告者にふさわしくない場合については、その取り消しが行われることになります。
気になるのは期限後申告(無申告)と青色申告の承認取り消しの関係です。
法人の青色申告承認取消ついては、国税庁ホームページの事務運営指針で「2事業年度連続して期限内に申告書の提出がない場合に行うものとする」されています。
これを個人の青色申告承認取消と混同している方が多いのですが、実は個人と法人では扱いが違うのです。
個人の青色申告の承認の取消しについては、所得税法第150条第1項に定められていますが、法人のような規定はありません。
つまり基本的には、期限後申告で青色申告の承認が取り消されることはありません。
ただし期限後申告が、調査があったことにより決定又は更正がされるべきことを予知してされたものであるときは、この限りではありません。
青色申告で本年分が赤字の純損失になってしまった場合、過去にさかのぼって赤字を相殺して税金の還付を受けることができます。
この制度を「純損失の繰戻し還付」といいますが、これにも要件があるので注意しましょう。
青色申告特別控除と同様、この制度に関しても期限内申告が要件となっているため、期限後申告では繰戻し還付を受けられません。
赤字だからといって確定申告を疎かにしていると、思わぬ損をすることになるのです。
所得税の確定申告を、申告期限内に済ませることは「当たり前のこと」ですが、誰の身にも万が一ということは起こり得ます。
もしそのような状況になってしまったら、神速さを持って少しでも状況が良くなるような行動をしましょう。
また分からないことがあったら放置せず、税理士などの専門家へ相談することをオススメします。
SMC税理士法人では、金融機関OBや税理士をはじめ経験豊富なプロが御社の円滑な 無解消 をサポートいたします。お電話やお問い合わせフォームから相談可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
このコラムの著者 : 舩田 卓
1972年愛媛県生まれのA型。 愛媛県立松山商業高校卒業後、東京IT会計専門学校に進学。 在学中に税理士試験を全国最年少20歳で合格。 そのまま専門学校の専任講師となり、税理士試験の受験指導を担当。 22年間務めた講師の道から飛び出しSMC税理士法人に入社。